冗長な駄作 「戦争と平和」 by トルストイ [読書&映画]
このブログは基本、肯定的に受け止められるものだけを載せていくつもりだったけど、
でも、これだけの時間と労力を費やして読了したトルストイの「戦争と平和」。
世界的に名著だといわれているこの本について、やはり何かしら言わなければならない、
と言う気がしますデス、ハイ。
以前、トルストイの「アンナ・カレーニナ」と「クロイツェル・ソナタ」と「悪魔」を読んだのですが
「アンナ・カレーニナ」は、文句なしの一級品だと断言できます。
「クロイツェル・ソナタ」や「悪魔」も中編・短編ながら、ドキっとするほど鋭い心理描写で、
さすが~、文豪!と思いましたが・・・・。
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さて、この「戦争と平和」ですよ。ВОЙНA И MИP ですねぇ。
これはね、全部で6巻まであるんですね。ま~、長い、長いわ。
なんだかね、詰まり過ぎているんです。書きすぎているっていうか。
昔のバロック小説みたいに。
テーマがいくつもありすぎるんです、
裾野が広すぎる。もっと集約させたらいいのに、って思いながら読んでいましたね。
長くても「アンナ・カレーニナ」だったら、それなりにテンション高く持って読むことが出来るんですけど。
なんか感じとしてはロシア版「風と共に去りぬ」って感じ?あれも長いよね。
でも、「風」の場合は主人公はスカーレットと決まっているし、めまぐるしく場面が変わったとしても、
そこにあまり混乱は生じないですけどね。
ただ、「戦争と平和」については主に、三つの家族が出てきまして、いわゆる群像劇とでもいいましょうか。
まず ①ボルコンスキー公爵家
親父 ニコライ
長男 アンドレイ
嫁さん リーザ
妹 マリア
そして ②クラーギン伯爵家
こちらはわりとましかな?
親父 クラーギン伯爵
庶子 ピエール(なぜにフランス語?)
もうひとつ③ロストフ伯爵家
親父の伯爵
かあちゃん
長女 ヴェーラ
長男 ニコライ
次女 ナターシャ
次男 ペーチャ
子供たちの従姉妹 ソーニャ
最初は、これだけじゃなくて、うじゃうじゃうじゃ~っと人が出てくるんです。ほかにも。
で、何のためにこれだけ出てくるんだろうってくらい出てくるんだけど、非常に読みにくい。
それに、誰にフォーカスかかっているのかもわからないしね。
だいたいにして、重要な登場人物の三人までがニコライですよ。
ロシアにはニコライ以外の名前はないのか!って怒鳴りたくなる。
ほかにもあるでしょう?セルゲイとかミハイルとかイワンとか。
アンナ・カレーニナのときも思ったけど、夫のカレーギンと愛人のヴロンスキーって
どっちも「アレクセイ」なんだよね。まぁ、そういう偶然って実際にあるとは思うけど、
わざわざ作為的にそういうシチュエーションにせんでもよかとじゃないですか?
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ま、それでも段々にメイン・キャストはアンドレイとナターリア、そしてニコライ、ピエールなんだなって
いうことが2巻の中ぐらいからわかってくるんですけど!
もう、最初は「誰だっけ?コレ?」の嵐ですよ。
悪口ばっかり言っていてもしょうがないので、いいところを言います。
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これはね、わたくし人間ドラマとしては全く買っていないのだけれど、
これはね、ロシア側から見た、ナポレオンのロシア遠征という「戦争」を描いたものとしては
大変に評価できるものだと思うんですね。
常勝将軍であるナポレオンは誰でも知っている英雄なのかしれませんが、
ドイツや、スペインから見て、そしてロシアから見れば、「理不尽」そのものの存在ですよね。
で、さしもの不敗を誇ったナポレオンも広大すぎるロシアの領土と
冬の寒さには勝てなかった、ってことです。
本を読んでいると、モスクワを占領して、燃えちゃうのが9月ぐらいなんです。
でもね、わたくしたち日本人の感覚でいえば、9月、10月はまだまだ暑い。
しかし、トルストイの小説はグレゴリオ暦ではなく、ユリウス暦て話を作っているため、
私たちの暦の感覚より2週間ばかり遅く、しかも、ロシアはさすがに北国ですので、
10月にもなれば氷点下五度まで下がり、初雪が降るんだそうです。
うう、読んでいるだけでも寒い!
ひもじくて、まともに冬の装束も用意してなくて、いつもいつも野宿だったら、
敵にやられる前に、死んじゃいますよね。
ハイ、実際そうやって果ててしまった兵隊さんはいっぱいいたようですよ。
そして、この戦争に一番功績のあった元帥、ロシア最高司令官、クトゥーゾフ公爵ですが、
彼だけは、きちんと前が見えていた。
彼だけが状況の把握ができた。
彼だけが、総合的にロシアの国益がなんであるか解っていた。
で、クトゥーゾフは肉を切らせて骨を断つような、モスクワを放擲して撤退する、という作戦をとるのですね。
なぜかといえば、そこで戦ってしまったら、モスクワも失えば、ロシアの軍隊も失ってしまう、と考えたのです。
街は再建すれば元通りになるが、(それでもかなり痛いことではあるけれど)
命は失われれば決して帰ってくることはない。
で、もう一つ偉かったのが、南下すれば兵站とか糧秣が豊富なことは解っていたんです、フランス軍もね。
だけど、そこへは至らせずにコサック軍を駆使して、往行のとき、さんざ荒廃させたスモレンスク街道しか
通らせなかったことですよ。スモレンスク街道には、もはや食料も馬も何もない。
そんなところへわざわざ、敵を蹴散らしに行かなくても、フランスさんのほうで勝手に自滅してくれます・・・。
おお、なんて素晴らしいストラテジー!
常に大局というものを見据えた大人物だったのです。
当時はクトゥーゾフという人物はあまりに突き抜けた人物だったので、
だれも彼のホントウの偉さっていうのが評価できなかったみたいです。
で、アウステルリッツで敗れた後(これもどれだけ、ナポレオンの軍略がすごくて
それを早い段階で気付いて、損害を最小限に押しとどめたクトゥーゾフの才能が理解できなかった)
クトゥーゾフは左遷され、バグラチオンに功績あり、として祝賀会を開いているあたりが可笑しいです。
・・・って日本だって第二次世界大戦中の大本営発表の戦勝報告なんて嘘っぱちだったですから、
人のことは言えないんですけどね 笑
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ですが、なんていうんですかね、ペテルブルグで戦争の全く悲惨さを知らず、
社交界やなんかで遊蕩にふけっている人は、現場の人の困難さなんてまったく理解できないんですよ。
あいかわらず、平和ボケしていて人のうわさ話とか、当てこすりとか、足の引っ張り合い・・・・。
自分自身全く犠牲も払わず、人の痛みなんてわからない人は、
皇帝に阿諛追従しているばっかりで、元帥の苦しい心の内など理解できようはずもなく、
軽蔑したり、自分が今度はこの出来事のおかげでどんな高いポジションが狙えるかっていう
小さいことばかり考えているんですね。
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こんなに自分の快楽の追求ばかり熱心で、人を人とも思わないような貴族ばかりがいるようでは
やはり、早晩ロシア革命のような大手術が必要だったのかも・・・・と思わずにはいられなかったです。
まぁ、そういう歴史的な意味では興味深い6冊ではありましたが、
もう二度と読みたくない!っていうのが正直で率直な感想です。
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順番がめちゃくちゃで申し訳ないんですが、
この話を読んでいて常に脳裏を横切っていたことがあります。
それはね、男女間の「人を好きになるってどういうことだろう?」ってことですよ。
主人公のひとりであるアンドレイは出身が公爵家という高い身分であるからか、
はたまた、高い教養を身に着け、キレるアタマの持ち主だったせいか、
あるいは、眉目秀麗な貴公子だったせいなのか・・・・なかなか妍かいな性格なのですね。
彼は最初、リーザという女性を妻にしていたんです。
このリーザは社交界では人気者で、コケットを振り回して、その場を明るく楽しいものにすることのできる
才能があったのですが、アンドレイってそういう妻のケーハクなところが赦せなかった。
で、リーザは身重でもうすぐ子供が生まれるっていうのに、アンドレイはリーザの「行かないで!」っていう
懇願を振り切って出征しちゃうんですよ。・・・・冷たいねぇ。
アンドレイとしては、自分が戦死する確率のほうがべらぼうに高くて、そのあと残されるリーザは
不憫ではあるな、とチラと思うんだけど、結果的にリーザの出産はとても重くてそれが原因で死んじゃうんですよね。
そこでアンドレイは自分がいかに勝手でリーザに申し訳ないことをしたか、ってシミジミしちゃうんだけど、
だからといって、そこで深い心の変容みたいなものは感じられないんだな。
で、その後、それでも失意にくれていたアンドレイはそれこそ「生命の息吹」そのもののような
生気にみちてキラキラした美少女、ナターシャを見初めて結婚を申し込むんです。
ま、ひと目ぼれしたんだろうな、ってわかるけど、ナターシャの家は貧乏貴族でして、
アンドレイの父親はこの縁談には乗り気じゃないんですよね。
それで「ちょっとお前アタマ冷やして、冷静になって、それでもあの娘が好きなら結婚したらよかろう」
ってアドヴァイスするんです。
で、アンドレイはナターシャを置き去りにしたまま、外国へ行ったっきりです。
そうすると、ナターシャは自分を持て余してしまうんです。アンドレイのことは好きだけど、
この自分の一生の中で一番美しい花の盛りをむざむざと散らしてしまうことに焦燥感を感じてしまうんです。
今のわたくしが読めば、「そんな大げさな~」と思うんですが、当時、結婚適齢期は早くて遅くても20歳までに
結婚しなければ行き遅れになった時代ですから、そういう焦りっていうのはすごいものがあるのかもしれないです。
で、そういう焦りを付け込まれてプレイボーイに誘惑され、駆け落ちしそうになり、それがもとで破断です。
ここらへんが、そうねぇオースティンの「プライドと偏見」のエリザベスの妹の駆け落ち騒ぎを彷彿とするし、
フランスだったら、生娘とこっそり関係を結び、そのまま口を拭っている「危険な関係」のヴァルモンとか
いろいろあるんだけど、ロシアはやっぱり世間的な戒律が厳しいのかなぁ~と思ったり。
アンドレイも器量が小さいなぁ、まだまだ子供のやったことだ、と大目にみることってできないんですかね。
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わたくしが思うに、男のほうはともかく、良家の娘は「恋に恋をしている状態」であって
恋愛の対象としている男性のホントウのところがわかっていないんじゃないかなと思うんですね。
結婚してみたら、実態ってこんなものなのか?ってあまりのギャップにびっくりするんじゃないかな。
最後のほうの春の妖精のようだったナターシャは
ピエール(急にデブでアホのピエールがしゃっきりとハンサムで賢くなっているのが解せないところです)
と結婚して何人もの子供を産んで
すっかりずっしりと太って肝っ玉かあさんみたいになって、それでシアワセって書いてあるけど、
なんかわたくしにはそれがど~にも解せないですね☆
もう少し、ナターシャやピエールには一度しくじった者としての、逡巡などがあってもいいような気がするんですね。
それに、結婚したらいきなり所帯くさくなって、ぬかみそ女房みたいになるのはどうなんでしょう?
別にフランスの貴婦人みたいに軽薄になれ、とはいいませんが
フランスの貴婦人はなぜそんなにも憧れられる存在かといえば、
やはり、その夫人の主催するサロンが素晴らしいものであったからでしょう。
そのサロンの女主人は芸術や文化の守護聖人であったのです。
サロンで紹介してもらって、そこの女主人が「あ、この人は!」と思う貧乏詩人、貧乏絵描きは
パトロンになってもらえて、世の中に出ることができたのです。
・・・・ロシアってそういうところがどうも出来てないような気がする。
最後のほうにピエールが仏軍の捕虜となって、一緒に行動を共にする百姓のプラトン・カラターエフを
一種の賢者と見做して、賞賛するくだりがあるんですけど、
わたくしにとって、そこがロシアの泥臭さだ、と思わざる得ないっていうか。
サロンで交わされる話がテレビのワイドショーもどきのような人のうわさ話に終始するようであれば、
そんなもの、なにが面白いんでしょうか?
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それに、青春のすべてを賭けてナターシャの兄ニコライを愛しぬいたソーニャですが、
ソーニャが一文無しのため、結局ソーニャは身を引いたんです。
それに対して、ナターシャは「彼女の存在はいちごの「むだ花」のようなもの」と一刀両断です。
・・・オマエ、どんだけ上から目線?って思いません?
こと、行動に関してはナターシャよりソーニャのほうが常識的だし、家族に対する献身の態度も深い。
あまりにも、ソーニャがかわいそうだと思うんですよ。
少なくとも、ソーニャは一緒に暮らしてきたニコライに対して、
きちっとどんな人かはわかっていて愛していたんだから、ナターシャとは立ち位置が違うと思うのです。
だから、ニコライとマリアが結婚した時点で、ソーニャに適当な伴侶を探してやるべきだったと思うんですよね。
フランス風にニコライがソーニャを愛人にできないんであれば、ね。
(そういう道もあったと思うよ)
とにかく、キャラクター設定が最初の部分で失敗しているように思えるのはわたくしだけ?
初めまして、突然のコメント失礼します。戦争と平和のあれこれを検索していて辿り着きました。実はまともによんだことがなく、映画と、ダイジェスト読みみたいなことしかしていないのですが、私もそのダイジェストで既にモヤモヤで、とてもじゃないがきちんと読みたくない…と思っていました。アンナ・カレーニナなんかは大好きなんですけどね。
ソーニャへの扱いが解せないこと、ナターシャがでっぷり太った主婦になって、めでたしみたいなかんじとか、トルストイの女性観に耐え乍ら読むのは困難だな…という気持ちでした。一方、戦争のところは確かにすごく説得力があるというか、良かったと思います。自分を捨てて読むことはできないので、モヤモヤしながら読むのもなかなかストレスだったりしますよね。それでもいずれ読もうとは思っているのですが……駄文失礼しました。
by 通りすがり (2017-07-10 19:03)
>通りすがりさま
コメントありがとうございます。
う~ん、拝読いたしまして、真面目な方なのだなぁと思いました。
読書は、やはり読み手と書き手の相性があるのだと思います。
これもだいぶ前に読んで、記憶もあやふやですが、
あんまりおもしろくないです。BBCのドラマをみて
「ふ~ん」で納得しておしまいで、全然かまわないと思います。
世の中には、全生涯を通して、毎日一冊完読したとしても、足りないくらい本がありまして、その中からどれをチョイスするかというと
自分のこれまで培ってきたカンというのに頼るほかない。
でも読んでみたら、あ、アウトというものもあります。
わたしも途中でやめることができず、最後まで我慢して読み通した、ほとんど修行のような読書もありましたが、それで満足したということはほとんどなく、
「なにゆうとんねん、ボケ~っ!」と本を床にたたきつけて終わり、ということがほとんどです。
買ったら、最後まで完読という習慣をすて、途中で「や~めた」という勇気も必要になってまいりますね☆彡
by sadafusa (2017-07-11 21:57)
初めまして
自分も戦争と平和、特に7時間の超大作であるロシア版の映画は
いつか、いつか見たいと思っているのですが・・・未だに二の足を
踏んでおります汗
なにせ「風と共に去りぬ」と「ベン・ハー」をまとめて見るのに相当する
時間ですから・・・
by U・M (2017-12-09 01:44)
U・Mさま
そうですねぇ。7時間とはすごいです。
二の足を踏むのも解るような気がしますよ。
by sadafusa (2017-12-11 20:55)