メアリー・カサット展へ行ってきました! [芸術]
久々に美術展へ行ってまいりました。
このメアリー・カサット展は京都近代美術館で開催されていたんですが、
反対側の京都市美術館にふと目をやると、
長蛇の列が!
むむむ?思ったら『伊藤若冲展』でした。
わたしねぇ、とにかく並ぶのがキライなんですよね。
伊東若冲そんなに魅力的かな~。ま、いいけど。
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裏のほうでサージェントのお話を掲載させてもらっていますが、
そのころ、ほとんどこういった類の画集は皆無でした。
だから資料は全部洋書で買って、読んでました。
本当は、同時期のホイッスラーとこのメアリー・カサットの三人をセットにして
『パリのアメリカ人画家』でお話を書いたら面白かろうに、とはひらめきはしたんですが、
もう英語を読むのがどうにも苦痛というか、また洋書だから高いんですよね~。
それにしても、あの頃、ホイッスラーもサージェントももちろんこのカサットにしろ、
画集もなにもなかったことを思えば、ああ、時代が変わったのかなぁとも思います。
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さて、ですね。
カサットって一見、子供とおかあさんを描いていて
そこに別に難しさがないので、とてもとっつきやすい画家さんなのかな、と思うんですが
今にしてみると、めちゃくちゃドライポイントがうまい。
つまり、描線がきれいなんですよね~。
女の人は、色には強いけれど、形には弱い、ってのは昔からの通説でございまして
それは確かにその通りなんだろうとおもうけど、
この方は、その昔のアルテミシア・ジェンテレスキなみに上手いです、デッサン。
そして、デッサンが上手いばかりでなく、色彩もメリハリがあって
非常絵自体に迫力がありますですね。
言われていることわからない、というムキもあるかとおもいますが、
例えば、同時代のフランスの女流画家のベルト・モリゾなんかと比べてみると (ベルト・モリゾの絵です)その卓越した力強さがわかってもらえるように思います。
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このくらい上手ければ、男の人にもひけはとらないと思いますが、
彼女はエコールデボザールの入学を断られるんですよね、女だからという理由だけで。
本当にしんどい時代だと思います。
それでも、めげずに素晴らしい絵を次々と描いた彼女は
やっぱり優れた先達と言えるでしょうね。
美しいだけに危うさも… 森麻季 アヴェ・マリア [芸術]
さて、久方ぶりにCDの感想でも書きましょう。
今回は森麻季、「AVE MARIA」です。
プロテスタントには、マリア崇拝っていうのがないからほとんどの人は知らないんだけど、
カトリックにはマリア崇拝っていうのがあるんです。
やっぱり、昔の人は直接神様や、イエス様に願い事をするのは、不謹慎で
畏れ多いことだと思っていたみたい。
今だって、直接オトーサンに「金くれよ!」なんて頼みにくいじゃない。
それより、オカーサンに「とーちゃんに金がいるって、かぁちゃんから頼んでみてくれよ!」
っていうじゃないですか。
ま~、それと似たような感じで、神様と人間の間に入るとりなしの存在として
大いに信仰を集めたのですよ。
で、「おとめマリアの頌(これはわが日本聖公会の名称。カトリックは「天使祝詞」というらしいよ)」
というのがあって、
これは、天使ガブリエルがマリアに
イエスをみごもるときに言った言葉なんだけどね、
今もカトリックの人はこれを唱えるワケなのだ。
「めでたし 聖寵(せいちょう)充ち満てる(みちみてる)マリア、
主(しゅ)御身(おんみ)とともにまします。
御身は女のうちにて祝せられ、
御胎内(ごたいない)の御子(おんこ)イエズスも祝せられたもう。
天主の御母(おんはは)聖マリア、
罪人(つみびと)なるわれらのために、
今も臨終のときも祈りたまえ。アーメン。」
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話はだいぶ横にそれた…
これを歌にしたのが、アヴェ・マリアなのね。
森麻季さん、いいですねぇ~。
才色兼備です。容貌も美しくて、声も美しい。
この方、思春期の頃、ニッカウィスキーのCMで
「オンブラマイフ」を歌うキャスリーン・バトルの歌声に感動して
ソプラノ歌手を目指されたそうです。
キャスリーン・バトルは毀誉褒貶が多い方らしく、
「キレイな声だけど、声量がない」と言われ続けていたそうですが。
わたくしも、ニッカウィスキーの声にやられたクチなので、
なんだかそういう森さんのデビューのきっかけをうかがうと嬉しくなります。
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たしかに、ソプラノというのは難しい声の領域なのだと思うのですね。
高い声は訓練次第で誰でもある程度は出るものかな?とは思うのですが、
ともすると、声を出すことに専念するあまり、「ヒステリック」に聞こえるもんなんですよ。
私も、ある程度の年齢を重ねるまで「オペラなんてヒステリックなものだ」と偏見を重ねていましたが、
それは、ただ単にヘタクソな歌手の歌声しか聴いていなかったからなのですね。
上手い方はどんな高音でもヒアノで歌えるし、声に幅は出てるし、やわらかく響くものなのです。
ま、こういうソプラノ歌手が越せない問題を全てクリアしているひとりに
やはり、森さんは入ると思いますね。
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このアルバムは、古今東西の「アヴェ・マリア」ばかりを取り上げたものなのです。
こういうのは、だいぶ前から一定の潮流みたいなものがあるらしく、
カウンターテナーのスラヴァが歌っている「アヴェ・マリア」もすでに購入済みなのですが、
そうですねぇ~、まぁ、好き好きの問題だとは思いますが、
スラヴァはさすがに外国人だけあって、声量もあるんですが、
ちょっとドスが効きすぎているっていうか、軽みがないかな~。
それでも「カッシーニのアヴェ・マリア」なんて珍しい曲を普及させた
功労なんか計り知れないものがあるんですよね。
(大河ドラマの「平清盛」で使われていた 笑)
まぁ、だいたいこのスラヴァのラインナップにほぼ同じですので、オリジナリティーはないですが、
聴き比べてみても面白いかなとは思うのね。
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まぁ、それでも日本の作曲家の服部隆之のアヴェ・マリアも入っているし、
アヴェマリアじゃないけど、モーツァルトの「アヴェ・ヴェルム・コルプス」も入っているし。
結構、良心的かな~と。
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今回ですね、すご~~く感動したのが、
あの、秋山兄弟が非常に凛々しく美しかった司馬遼太郎の小説をドラマ化した
『坂の上の雲』のタイトルに使われていた『スタンド・アローン』です。
作曲はジブリでおなじみの久石譲。
自衛隊のアイドルの三宅ゆかりちゃんが歌っている分には
かわいいな~、上手ね~
で、ハイおわりなんですけどね。
マキさんが歌うと、非常に美しくて心に何かこう、凛としたものが
染み透って行くんですよ。
歌詞がまた、いいんです。
コレ、司馬さんの小説から採ったのかしらん?(作詞も久石さんだった…)
「凛として旅立つ、一朶(いちだ)の雲を目指し」
なんかね~、白い制服をピッと来た秋山好古が、
二百三高地に向かって馬上から最敬礼している図が脳裏によぎっちゃって。
なんかしらん、妙に感動しちゃうんだな~。
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でもね、一方でこういうのは非常~~~に危険。
昔、戦争中大本営が『海ゆかば』の曲をラジオで流ながら、
戦没者の名前を発表してたっていうじゃないですか。
上手いんですよ、軍部っでこういう演出が。
本当は、戦争は悲惨のひと言にしかすぎないというのにね。
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マキさんは別に戦争礼賛しているわけでもなんでもないだろうけど、
こういう類まれな才能が、悪用されるとコワイな~とちょっと思ったんでありました。
たまにはシブく古楽など・・・ [芸術]
今日はすんごく久しぶりに京都コンサートホールへ行ってまいりましたのことよ。
京都コンサートホールは今からおよそ20年ほど前に
京都の北山に建てられた、クラシック音楽専用のコンサートホールです。
まだ、バブルの恩恵に浴していた頃に建てられていますので、
ゴージャスです。大理石ふんだんに使われています。
建てられた当時は、そのあまりにモダンな雰囲気が冷たい感じがして
そんなにイイとは思わなかったんですが、
トシとってくるとようやくこういうモダンな建築物の良さみたいなのが
分かってくるようになったみたいです。
ハコそのものはいいんですが、最近は京都市の予算があんまりないらしくて
いい演目が来ないんですよぉ~。
以前はキーシンとかアルゲリッチとかフランスのフィルハーモニーとかばんばん来てたのにな。
ちょっとさびしい・・・・。
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とはいえ、そんなに知名度が高くなくても、いい音楽っていうのはあんがいひっそりと行われ、
案外根強いファンっていうものがいるもんなんですよね。
今日はその一端ですね。
題しまして「バロック宮廷の華/ダンスと音楽の饗宴」っていうのを見に行ったっていうか
聴きに行ったっていうか。
というのは、音楽もあったけど、+バロック・ダンスっていうのも、やっていたのです。
今はそんなに古楽って流行っていないのかもしれないですけど、
一時期、今から20年ほどまえか・・・古楽が流行っていたときがあるんです。
で、そのときに結構そういうバロックがらみの音楽やら映画やら、よく作られていまして
思い出すだけでもちらほらと。
まず、「めぐり逢う朝」
「王は踊る」
- アーティスト: フロリアン・ハイリク,ラインハルト・ゲーベル,ムジカ・アンティクワ・ケルン,フロリアン・ドイター
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2001/06/21
- メディア: CD
「宮廷料理人ヴァテール」などなど。
まだまだあったような気がするけど、ま、それはおいといて。
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まずですね、バロック・ダンスっていうのは、まぁ、ルイ14世の頃に確立しまして
今のバレエのもとですね。
まぁ、バレエほど激しいアクロバティックな動きはないのです。
踊っているのはあくまでも宮廷人であって、プロのダンサーではないのですから。
といっても、かなり難しく、踊るにはかなりの訓練が必要だったでしょう。
そういえば、「チューダーズ」のドラマの中では、
タムジン・マーチャント扮するキャサリン・ハワードが侍女を従えて
ダンスの練習をしまくるシーンがありましたが、あれこそまさにバロックダンス。
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音楽のほうは、先ほどいいました「めぐりあう朝」の中に使われていた
マラン・マレの「スペインのフォリア」が美しかったです。
ヴィオラ・デ・ガンバは今のチェロよりかなり小型のもしかしたら、
今のヴィオラのほうが近いのかもしれませんが
実に深くて格調のある低音がでる楽器なのですね。
いままで、さんざCDとか映画とかのメディアでは聞いたことがありましたが、
生のヴィオラ・デ・ガンバの演奏は初めて。すごく美しくて感動しました。
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あと、青柳いづみこさんのピアノで知っていた、
ジャン・フィリップ・ラモーの作品。
「ロンドによるミュゼット、タンブーラン」
青柳さんはピアニストなので、この曲をピアノで演奏していましたが、
今回はクラブサン(ハープシコード)でしたので、おんなじ曲を演奏していたとしても
それはそれでまたかなり違った印象でした。
クラブサンの音色ってどことなく、緻密に編まれたレースのような感触があります。
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ダンサーはバロックダンスの研究家でまたダンサーでもある方が踊っておられました。
よく当時のスタイルを研究して復元してあると思いますが、
いかんせん、そうとうお年だったような気が・・・。
自ら踊りたい!という気持ちわかりますが、
最近は八頭身のダンサーはいくらでもいますので、
クラシック・バレエをやっている子だったら、踊れると思います。
んんん~、こういうとまた毒舌になっちゃうんだけど、
こういう世界はまた独特の、いってみればオタクの香りがするんですよ。
ともすると、偏った方向へ行きがちです。
「わかる人だけにわかってもらえばいい」
というまさしく独立不羈の精神があるんでしょうけど、
そうやっていると、ますます一般ピープルの目から離れて、触れることはなく、
大勢の目にさらされることによって、芸そのものが磨かれる機会が減るわけです。
ちょっとそこが残念だったかな~f(^^;
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途中で古楽奏者の方のお話もあり、
ヴァイオリンというのは16世紀ぐらいに入って
やっと正式な楽器だと宮廷から認められたのだそうです。
というのは、演奏するとき、楽器をアゴに挟む恰好が「屈辱的」であり
かつ、演奏するスタイルがアシメトリーであって、シンメトリーではなく
この時代、「秩序」とか「調和」を重んじていたので、そういった不安定な演奏スタイルは
好まれなかったそうです。
おっしゃるところによると、正式にヴァイオリンが認められるまでは
異教の「ユダヤ人の楽器」だとして、辻でヴァイオリンなどを弾いていたりすると
刺殺されても文句いえなかったそうです・・・。
へぇ~。西洋音楽っていったら、まずヴァイオリン
と今日の我々は思いがちですが
意外とそういう秘められた歴史があるんですね。
とても勉強になりましたワ。
クロイツェル・ソナタ [芸術]
じっとしていると、なおさら手首がジンジンしてくるような気がしてくるTT
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今日、トルストイの「クロイツェル・ソナタ」と「悪魔」を読了した。
ま、話の内容はほか機会にゆずるが、
この曲のプレストの「官能性」が、不倫の男女の仲に拍車をかけるというくだりがある。
へぇ~、と思いつつ、このCDを取り出してきた。
前橋汀子とクリストフ・エッシェンバッハのデュオです。
アマゾンではもう取り扱っていませんでした・・・(TT)
わたくし、曲名と名前がいっつも混同して、メロディは知っていても、タイトルは知らない、
タイトルは知っていても、曲名と結びつかないことばっかりなんですよ↓
読書中も、「ああ、あの曲だな」と思っていたのが実はクロイツェルではなく、
スプリングのほうだった!
夫の忠告で正気にもどったかに見えた妻は
クロイツェル・ソナタの官能の魔術にかかって、一緒にデュオを奏でたヴァイオリン弾きと
越えてはいけない男女の一線を、その晩超えてしまった・・・・。
うう~ん、そう思ってきけば、そんな気もするけど・・・。
わたくし、ベートーベンに官能を感じたことはなかった・・・。
だけど、タイトルを「クロイツェル・ソナタ」と名付けたトルストイのセンスってすごいわ。
全く、芸術家の創造力ってものは、われわれの思念の範疇を超えているデス。
掘り出し物! ~サンソン・フランソワ 三枚組~ [芸術]
先日、映画を見に行った帰り、レコード屋さんに寄りました。
なにげな~~く、いいものないかなぁ~と店内を物色です。
わたくし、ピアノが好きなので、自然とピアノコーナーへ行ってしまいますね^^
そこで、発見してしまいました!この輸入盤CDを!
このヴァンサン・ペレーズばりの目力の強いおにいさんはダレ?
おおお!これは若かりしときのサンソン・フランソワらしい・・・・。
えええ~。です。びっくりです。
サンソン・フランソワって若いとき、こんなにハンサムだったんですか・・・・。
西洋人って、若いときすごくキレイなのに容貌が衰えるのって早いんですね・・・・。
そこへいくと、日本人はおだやかに年をとっていけてある意味シアワセかも^^;
ところで気になるメニューですが、なんとCD三枚組で1800円の安さですよ!
①はショパン、②はドビュッシー、③はラヴェルです。
一枚600円です、アハハ。
わたくし、考えてみるとフランスの音楽ばっかり好きで、
シューベルトとかブラームスってほとんど聞きません・・・・。
(でも、反対にフランスの人はフランス人の作曲家の曲はほとんど聞かないで、
ドイツ音楽をより好まれるそうですヨ)
ショパンやドビュッシーはほかの版でサンソン・フランソワのをもっていたんですが、
今回購入したのは、ラヴェルの「夜のガスパール」が挿入されていたからです。
評判の高い、アシュケナージ版とは相当違うアプローチです。
アシュケナージはとても洗練されていて心地よい響きです。
それを聞きなれていると、このサンソンのはそうとう変わって聞こえます。
でも、この間読んだ青柳いずみ子さんの解説によると
ラヴェルの曲というのは徹頭徹尾「人工的」であり「悪魔的な不協和音」をものともしない
作りというのがウリとあったので、
それと照らし合わせれば、サンソン・フランソワのが、より作曲家の意思に忠実なのかもしれないなぁ~
と思ったりしました。
ギターの詩人、パラグアイが生んだ偉大な魂 ~バリオス作品集~ [芸術]
昨日はギターによるスタンダードな作品の演奏でしたが、
今日はちょっと毛色を変えてみませう。
日本じゃほとんど知られていませんが、パラグアイが生んだ、偉大なギター奏者、兼作曲家ということでしょうか。
このCDを演奏しているギタリストのジョン・ウィリアムズ(スター・ウォーズの作曲家とは別人)は
バリオスに対してこのような賛辞を述べております。
「アグスティン・バリオスはギターのショパンだ・・・」
「彼ほどギターという楽器と一体化し、しかも多彩な音楽を生み出しえた作曲家はほかにいない。
ヴィラ=ロバスのギター曲もたしかに独創的だし優れているが、
ギターの性能を多面的に生かし切っているという点ではバリオスが勝る。
バリオスは彼の時代の最良のギタリスト=作曲家だ。
否、ひょっとしたらあらゆる時代を通して最良の存在と位置づけされているかもしれない」
続けて
「そして、バリオスの楽曲のうち高度なものには、私たち専門にギターを弾くものをも、
またその聴き手たちをも心から満足させてくれる本当のヴィルテュオジテ(名人芸の発露)がある」
いや~、スゴイ!
手放しの賞賛ですね。
でも、それもこのアルバムを聞いてみれば、さもさも、げにげに、とうなづいちゃいます。
わたくしはギタリストじゃないし、ギター弾いたこともないから詳しいことはわかりませんが、
一聴すると、そんなに難しい曲には思えません。
ですが、これ見よがしのパぁ~っとした派手なところはないけれど、
でも、一度耳にしたら、その美しくて、哀愁があるメロディーは忘れられるものではないのです。
バリオスは20世紀も近い、19世紀の終わりに南米であるパラグアイで生まれています。
彼自身は全くの白人ではなく、現地のインディオの血も混じっていたそうです。
そしてそのことを誇りに思い、その血脈が守ってきたインスピレーションというものを
とても大事にしていたという神秘的なエピソードがあります。
ラテン音楽は美しいけれど、どこか物悲しい。
特にバリオスの場合のそれは、悲哀というものではなくて、たとえば、美しい子供時代を思い出させる
ちょっと感傷的な甘い響きのニュアンスがあり、決して卑屈なものではないのです。
太陽が高く登った昼下がり、真っ白な教会の壁に落ちる、自分自身の濃い影。
広場の前の小さな泉からこぼれる冷たい水。
石畳からゆらゆらと立ち上る蜃気楼。
そして、無数の光を放ちながら流れていく川・・・・。
緑の木陰。赤紫の花、オレンジ色のスイカズラ。
若かった時分の美しい母の笑顔。
そしてチョコレート色の肌にオレンジのシャツを着て
暑さをものともせず、駆け回る少年たち。
・・・・大人になることを憧れをもってみていた少年のころの自分自身。
そんなものへの愛惜の情が音楽を通して見えてくるような気がするのです。
芸術はただ、きらきらひらひらと美しいだけでは芸術になりえない。
そこに魂がなければ。
大胆で奔放、繊細にして華麗。マルタ・アルゲリッチ ~ラフマニノフピアノ協奏曲第三番~ [芸術]
先日はランランのラフマニノフ、第二番を紹介しましたので、じゃあ、今日は三番ね。
- アーティスト: アルゲリッチ(マルタ),ラフマニノフ,チャイコフスキー,シャイー(リッカルド),キリル・コンドラシン,ベルリン放送交響楽団,バイエルン放送交響楽団
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2005/06/22
- メディア: CD
やっぱりランランがすき! ラフマニノフピアノ協奏曲第二番 [芸術]
このCDって以前にも紹介したかもしれないけど
最近毎日聞いています♪
やっぱり、とてもイイ。
はじめはとてもゆっくりと重い足取りを引きずるように・・・・・。
そして深くて冷たいネヴァ河のように、滔々と水は流れる・・・・。
とてもロマンティックでドラマティックなんです。
わたくしはもう一枚、ルービンシュタインのも、もっていますが
こっちはとってもクール。
録音が古いからなのかもしれませんが、オーケストラとの兼ね合いというか、
バランスがどうもイマイチわるい、と思うんですよ↓
途中オーケストラが主旋律を、ピアノがまた別のメロディを弾いているパートがあるんですが
どうも、ルービンシュタインのはピアノばっかりが聞こえるのはどうして?
でも、人の好みがあるから、もしかしたらルービンシュタインのようなスタイルがいい、という人も
いると思います。
ただ、ランランのほうのアマゾンのレビューみると、
結構辛辣な批評もあり、「中国雑技団のようなケレン味たっぷりの演奏」とか
最初の低音が電子ピアノみたいだ、とか 怒
ちょっとファンのわたくしとしては面白くない。
まぁ、いいです、そう思ったんだから。
人の感受性は多様だしね。
それは、イイとかワルイとかじゃない、好みですね。
何かこのランランの演奏を聴くと、「青年の恋の悩み」みたいな印象が・・・。
当人にしてみれば、つらい恋なのかもしれませんが、
もう、青春という輝かしい時期をとうに過ぎ去ってしまったわたくしからみれば、
そんな姿も、限りなく美しいというか、なんというか。
キーシンのも買って聴き比べたいかな?と思ったんですが、
どういうわけか16歳のときの録音しかない・・・・。
まぁ、神童のきこえが高かった彼だから素晴らしいのかもしれないけど・・・
もうちょっと、最近のが聞きたいかも・・・です。
昔チャイコのピアノ協奏曲のほうが好きだったのに、
今聞いてみるとなんかうるさく感じられるのはなぜ?
やっぱり、人間って変化するものなのだなぁ~と思います。
- アーティスト: Franz Liszt,Fryderyk Franciszek Chopin,Robert Schumann,Wolfgang Amadeus Mozart,Lang Lang
- 出版社/メーカー: Deutsche Grammophon
- 発売日: 2006/03/14
- メディア: CD
↑このアルバムのショパンの表記、変わっている。
フレディリック・フランソワ・ショパンじゃないね。フリセック・フランシチェク・ショパンになっている。
なんでだろう?面白いですね。買おうかな・・・・。
あ、それともうひとつ、トレビアネタを・・・。
モーツァルトのミドルネームは「アマデウス」として知られているけど、
彼自身生前、「アマデウス」とサインしたものってないんだそうで。
ただし、「テオフィル」と書いておられたようです。
アマデウスはラテン語、テオフィルはギリシャ語。
意味はどっちも同じなんですけどね、どうしてこうなったんだろう・・・・。
シャンデリアのきらめく光と人々の喧騒に酔いしれて ~La Valse~ [芸術]
きのうは、ラヴェルの「夜のガスパール」でしたが、
ここでもうひとつ、わたくしの「超」お気に入りをご紹介させていただきます。
それは「ラ・ヴァルス」ですね。
なんともゴージャスといいましょうか、
作られたのは1875年ということですから、
バブリーで金ぴかのフランス第二帝政はその終焉を迎えていたとはいえ、
その余韻を世の中の空気に漂わせていたわけであります。
Rachmaninov: Suite No. 2, Op. 17; Ravel: La Valse; Lutoslawski: Paganini Variations
- アーティスト: Sergey Rachmaninov,Maurice Ravel,Witold Lutoslawski,Martha Argerich,Nelson Freire
- 出版社/メーカー: Philips
- 発売日: 2007/08/14
- メディア: CD
北欧の樹氷のきらめき ~フィンランドのピアノ小品集 by 館野泉~ [芸術]
みなさま、大河ドラマってみてらっしゃいますか?
わたくしはひさしぶりに「平清盛」見ています。
大河って昔に比べると、蓬髪をしていたり、妙にセンチメンタルだったり
重厚さに欠ける、ような気がします。まぁ、何事も時代の潮流があるのだとは思うけど・・・・。
今年は、あんまり人気ないみたいですね~
いつも思うのですが、たぶん時代色を出すため、出演者の方はカオをなにかヨゴレメークしてますよね。
・・・・・でも、平家の棟梁息子たる清盛がこんなにキチャナくていいのか、などど
逆に疑問を感じてしまったりしますが・・・・・
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ところで、この「平清盛」とタイトルのどこにつながりがある?と思っていらっしゃる方おられますね。
そう、それは正しい。
でもね、平清盛のテーマのピアノは館野泉さんが弾いてらっしゃいます。
館野さんは東京芸術大学を主席で卒業されたあと、
ながらくフィンランドでご活躍をされていた、知る人ぞ知るピアニストなのです。
わたくしは、お恥ずかしいことに、ずっと名前をみて女性だと思っていました。
でも、実はなかなかハンサムな男性で~~す。
なんでも日本初のファンクラブがある方なのだとか????
ではでは、CDを紹介します。
- アーティスト: 舘野泉,メラルティン,パルムグレン,シベリウス,メリカント,ハンニカイネン,リンコ,クラミ,クーラ,カスキ,マデトヤ
- 出版社/メーカー: ダブリューイーエー・ジャパン
- 発売日: 1996/11/30
- メディア: CD
フィンランド・・・・?知らんなぁ~というのが
たいていの人の反応だと思います。
わたくしもほとんどしりませんでしたが、
なかなかステキなの。
わたくしは、ピアノ部門では重厚なシューマンとかベートーヴェンなどのドイツ音楽より
ドビュッシーやラヴェル、ショパンなどのフランス人および、フランスで活躍したフランス音楽のほうが
好きなのだけど、
このCDは、なんというか印象がクリスタルガラスのような、というか
光を浴びて輝く氷柱か樹氷のような清冽で、ひっそりとしずかな印象があります。
CDは二枚組でフィンランドでは有名な作曲家の作品が27曲、収められています。
シベリウスの「樅の木」などキラキラとした印象で、なかなか華麗です。
日本では結婚行進曲というとメンデルスゾーンのものが大変有名ですが、
フィンランドではクーラという方のものがより好まれるそうです。
確かにメンデルスゾーンのようなドラマティックな重厚さみたいなものはありませんが
こちらのものも清らかでつつましやかで、それでいて美しい。
北欧の、白に近い金髪碧眼の美しい花嫁が
薔薇やユリなどの華麗なものでなく、
素朴な野に咲く花の冠を被ることによって
よりその美しさが引き立てられるような感じ。
それらの北欧独特の感性をもつ曲を館野さんは繊細なタッチで見事に弾きこなしておられます。
実際、館野さんはフィンランドでも高い評価をつとに得ておられまして、
フィンランドでは外国人としては初めて、フィンランド政府から終身芸術家年金を給付されました。
ただ、館野さんは十年ほどまえに脳梗塞を患われて、
以前のように右手が動かなくなってしまったそうですが、
左手だけの曲を弾かれるなど、現在もますますご活躍のご様子です。
でも、このCDはご病気になられる前なので、
全盛期の館野泉さんを堪能することができます。