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キリスト教における正統と異端  ③原罪ってなに?  [シリーズで考える深い考察]

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今日もあっついですねぇ~

暑いのに、こんなメンドくさいトピを立てているわたくしもどうかしている、

と我ながら思うんですけど、

でも、でもね。キリスト教っていうのは、別に信者にならなくても、その文化を楽しむには

面白い宗教だと思うんです。

みんなヨーロッパへ海外旅行へ行くでしょ?ルーブルへ行ったりプラド美術館へ行ったり、

あるいは大英博物館へいくこともあるでしょう・・・・。

でも、西洋絵画っていうのは、宗教的あるいは歴史的テーマがない、

すなわち「その絵」だけを見て楽しめるのは近代以降なんですよ。

だから、キリスト教、とくにカトリックの教義を多少知っていると面白い、と思うの。

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ということで、今日は日本人にもっともなじみがない考え方「原罪」にいきたい、と思いマス 笑

さて、前回ですが、「人間は罪がなければ死ななくていい」といいましたね。

でも、人間は絶対に死ぬ。理論上、どんなに罪がない人でも。

なぜなら「生まれながらに背負ってきた罪があるから」と。

では、どうしてそんな考え方が生まれたのかっていうのをちょこっと考えてみたい。

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みなさん、旧約聖書の中にあるアダムとイブのお話って知ってますか?

あるとき、神様は天地創造されたんです。(なぜか、といわれてもわたくしにはわかりませんが)

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神様は、混沌としたカオスの中から渇いた大地と海を分けられ、空をつくり、

山をつくり、川をつくり、緑をつくり、そして

つがいの動物をつくり、っていろいろやられたわけです。

そして最後に「ん~、なんかものたりな~い」って思われたんです。

そこで、「わたしに似せたイキモノを作ろう・・・」

そうやって泥からこねて作ったのが人間、アダムなんです。

土くれから作った人間なので、神様はアダムの鼻にふっと息をかけて

生命を吹き込んだのですね。

神様は自分の喜びや悲しみっていうか、自分の考えに共感してくれる存在ができて

満足だった。

そして、美しい花々が咲きこぼれる楽園、エデンの園に彼を住まわせた。

でも、アダムって、神様がいなくなるとなんとな~く所在なさげでさみしそうなんですね。

神様はそれを見て、「ん~、アダムもその、なんだな、さみしいのかもしれんな」

と思い、仲間を作ってやろうと思ったのです。

そしてアダムが眠り込んでいるとき、アダムのあばら骨をそぉ~っと一本抜き取り、

そこから作ったのがイブ。

アダムはなんだか知らないけれど、イブという仲間が出来てうれしかった。

でも、同じようでも、自分とイブってなんとな~く体の印象が違うな、とは感じていました。

でも、まぁ、神様のなさったことだから、とそこは深く追求せず、毎日毎日楽しくふたりで暮らしていました。

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あるとき、神様はアダムとイブに向かってこうおっしゃいました。

「おまえたちは、ここで何をしてもいい。だけど、このエデンの園の真ん中に生えている

「命の木」と「知恵を知る木」の身を食べてはいけないよ、

あれを食べると死ぬからね・・・・」

「へぇ~、そうなんですか。わかりました」

ふたりは「死ぬ」ってことはどうなることなのか具体的にはわからなかったけれど、

神様が恐ろしげに注意された、ということは、おそらく食べたら大変なことになるのだな、

と思って、用心深くその二つの木に近づくこともしませんでした。

ところが、ところがですよ~

ある日、のほほんとおなか一杯になって昼寝をしようと思っていたイブのところへ

へびがやってくる。

「イブさん、イブさん。ちょっと、ちょっと」

「あら~、ヘビさん。お久しぶり。なんか御用?」

「あなた、神様から「命の木」ってのと「知恵を知る木」っていうの、たべちゃダメっていわれたんですって?」

「そうなのよぉ~。なんでも食べたら死ぬんですって。毒でもはいっているのかしら?」

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「イブさ~ん、あんた本当にお人よしね、あれはネ、すんごくおいしいんです。

だけど、神様はぜ~んぶ独り占めにして、あんたたちには食べさせたくないんですよ。

もぉ~、ほっぺたおっこちますよ。あたしゃ、知ってんです。

イブさん、あんなにたくさんあるんです。一個ぐらい食べてもわかりませんて。どぉ~」

とコトバ巧みに誘うんです。

「でも、ダメって言われているのに、そんなことできないわよ!」

「そう・・・。まぁ、なんとバカ正直な。あたしゃ親切のつもりで言ったんですけど、

 ま、強いてとはいいませんよ。じゃね」

そういわれると、むくむくとイブの中の好奇心がもたげてきて、

「ダメよ、ダメダメ」

「でも~、食べてみたい」

というココロの葛藤が生まれるんですが、ついにはその好奇心に負けちゃうんですね。

イブは意を決して、「知恵の木」の実をひとつかじって食べてみた。

う・・・・・ん、おいしいけど、でも、ほかのものよりとびきりおいしいかなぁ???

とおもっているうちに、イブは今までぼんやりとしていた心地から急に頭がしゃっきりしてくるような気がした。

向こうからアダムがやってくる。

アダムは当然裸です、自分も裸です。

そして、その違いは突然はっきりとわかってきた。

そして、そして、彼のカラダをみると、今まで感じなかった体の奥底で疼きのようなものが

突き上げてくるのを感じた・・・・!

そういう感情をイブはたまらなく恥ずかしいと思い、こんな感情を自分ひとりで感じているのは

いやだと思ったのです。そして、彼女はアダムにも「知恵の実」を食べるように勧める。

アダムは始め、かたくなに断っていたのですが、やはりイブの誘惑に逆らいきれなかった。

そして、ふたりはとうとう、禁断のこの実を食べてしまった!

するとどうでしょう?

なんで今まで、無邪気にふたりして裸でいられることができたのか、とおもうぐらい

お互いのカラダが気になってしょうがない。

だからふたりは、いちぢくの葉で、局所を覆った。

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ある日、神様はいつものように、アダムとイブを呼んだ。

だけど、ふたりはいつものように、無邪気に「はぁ~い」とは出てこない・・・。

いぶかしく思った神様は二人を探した。

すると、ふたりはいちぢくの葉をつなぎとめたものを腰にまわして

ビクビクしながら縮こまっていた・・・・。

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神様は、一瞬にしてわかってしまった。ふたりがどういう事態に陥ったかを。

「お前たちは、私の約束を破ってしまったのだね、あれほど

「知恵の木」の実を食べちゃいけないっていっていたのに」

「ごめんなさい、神様。でも、私が悪いんじゃないです、イブが食べろ食べろって言ったんで」

「ごめんなさい、でも、私ばっかり悪いんでもないです。だってヘビが言葉巧みに誘うから、

つい、好奇心に負けちゃったんです」

ふたりとも、責任を他人になすりつけて、自分の非を心からわびようとしなかった。

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神様は、悲しみと怒りで大きなため息を一つつくと、

「もうこうなってしまったからには、仕方がない。

 お前たちはここにもう、置いておけない。お前たちの最大の罪というのは、

 私とお前たちの間に垣根を作ったということだ。つまり、ヒミツを持ったということなんだよ。

 イブよ、お前は今自分が「女」だということを自覚しただろう?

 お前は苦しんで子供を産む。そしてお前の夫となるアダムに従わなければならない。

 アダムよ、お前も自分が「男」だということを自覚したろう?お前は地に汗をして働き、

 子供と妻を養っていかなければならない。そして、年老いて死ぬ。

 知恵の実を食べたということはそういうことなのだ」

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とふたりは楽園追放!です。

・・・・つまり、この話を読んでいると「生殖」というのは罪の結果の行為なんだとしか思えないですね。

 罪の結果、子供が生まれる。その子供も、結婚して子供を作るのは逃れられない罪。

 つまり、原罪なのかなぁ~と。

 こういう考え方って全部のキリスト教でとっている考え方ではないし、昔の教父たちのそれこそ

理屈をこねまわした教理なんて知らないし、理解できないので、こんなもんかとおもうんですけど?

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それにしても、神様、意地悪だとおもいませんか?

なぜに、人の目に触れるところに「禁断の木の実」を置いておく?

それがそもそもの間違いの発端じゃないですかねぇ?

それにさ、どうして男と女をあらかじめ分けて神様は創造したの?

こういう結果を招くことは十分に前もってわかりそうなもんじゃん?

人間を試しているの?

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ちいさいとき、この話を聞いて、ヘンだヘンだと思っていました。

なぜ、神様はニンゲンに間違いを犯す可能性という余地というものを作ってしまったんだろう?

完全に自分の言うことだけを「間違いなく」きく存在にしておけば

こんな面倒には巻き込まれなかったのに・・・・・。

(この疑問はよくよく覚えておいてくださいね。あとで異端のときに

 いまのこのギモンが役に立つときがきます・・・・)

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でも、ですね。大人になってこう考えました。

神様だって、ロボットみたいな反応しか示さない人間を作ったって面白くもおかしくもないんですよ。

だって、意外な反応を示す、ってところが人間の醍醐味なんですから。

そういう意味で人間を観察するってことは

神様の大いなる娯楽なのかもしれないです・・・・・・・。

懸命にもがいて生きている人間はやっぱり面白いでしょう・・・・神様から見ればね。

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ふっ・・・

人間って何なんですかね・・・ってハナシですね。

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っていうか、この創世記の話はなにもユダヤ人だけの話じゃないんだと思うんですよね。

たぶんメソポタミアの古い古い言い伝えなんでしょう・・・・。

そこに無理やりユダヤ的な味付けをするから、どうしてもこんなふうな「理不尽」な神様に

仕立てあがるんだと思うんです。

それをやっぱりキリスト教になってからの神学者が四苦八苦して

その理論を展開させる、ってところが真相のような気がします☆

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ハイ、原罪についてだいたいのところは解ってもらえたと思います。

で、イエスですよ、

キリスト教は妙に「イエスは処女マリアから生まれ」ってところを強調していますね。

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そうなんです。つまり原罪のモトである生殖行為の結果、この世に生まれ出でた存在じゃない、

ってことを教会は強調したいんです。わかった~?

だから、イエスはね、死ななくてもいい、っていうか神の子なんですよ、神性があるってことなんです。

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で、のちの世になるとめちゃくちゃ聖母信仰っていうのが盛んになるんです。

本当はローマ・カトリックは聖母の神性というか信仰なんて認めたくないんですけど、

どうしても民衆の要望を抑えることが出来なかった。

それで聖母の神聖な存在ってことを認めたんです。

その結果、聖母マリアも「原罪」から逃れている、っていうことになってんです。

ですから、スペインのムリーリョあたりがとってもすてきな

「無原罪のお宿り」っていうタイトルの絵を描いていますね。

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あれは、天上にいるマリアがイエスの母となるために、

マリアの母アンナ(つまりイエスのおばあさんにあたる人)のおなかから

生まれることを祈っている絵なんです・・・・。

プロテスタントの人は聖書第一主義なんで、聖書にはどこにも、そんなことが書かれていませんので

聖母信仰っていうのはないんです・・・・・汗


La vie aventureuse de D'artagnan  ~ダルタニャン物語  ⑨ 人物紹介 ルイ14世~    [シリーズで考える深い考察]

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さて、この回で「ダルタニャン物語」シリーズは終了にさせていただきます。

では、おおトリは誰かといえば、

この方しかいらっしゃらないでしょう~。

ジャ~ン、ルイ14世で~す!!

ルイ14世っていえば、絶対王政の絶頂に立った王様として

ヴェルサイユ宮殿を立てた人としてとてもとても有名ですね。

でも、この方、よくわからない人でもあるんですよね~。

彼はルイ13世とその后であるアンヌ・ドートリッシュの子であり、

二人の間には23年間も子供が授からなかったことから、

ルイ13世は、息子が生まれたときうれしさのあまり、

彼のことを「ルイ・デュードネ」(Louis-Dieudonné)、つまり「神の賜物」と名付けたといわれています。

まあねぇ、お世継ぎが生まれる、生まれないっていうのは

その国の死活問題になりますので、そりゃありがたかったでしょうよ。

でも、13世が本心から喜んで「ルイ・デュードネ」と名付けたのかというと、

少しだけ疑問も残るんですよね。この場合。

といいますのも、フランスにおいては、デュードネという名前自体がちょっと

怪しいんでございまして、裏の意味は「私生児」という意味もあるんですのよ。

だって、私生児っていうのは、愛といいましょうか、パッションの賜物でしょうが・・・。

それはすなわち、神の恩寵なわけでございまして^^;

20年以上も夫婦の間に子供ができなかったのに、いまさら~?って感じで

ルイ13世は、「もしかしたら自分の子供じゃないのかもな」と十分に疑っていて

それでもって、皮肉をもってこう名付けたんじゃないか?とも考えられているわけです。

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何回でも、くどく言いますがヨーロッパの王室というのは、王妃の産んだ長男こそが

王太子たる資格があるわけ。

いくら王様の子供であっても、愛人の腹から生まれた子供であれば

いくら賢くて、美しくて、才能があっても王様のお世継ぎにはなれない、ということです。

たとえば、スペイン・ハプスブルグ家のフェリペ4世などは

お妃と王様の血が濃すぎて、子供が弱くて育たたない。

なぜ叔父と姪という、禁忌も犯してまで再婚したのか?

そして、頼みのフェリペ・プロスペロが死んだあと、近親婚の当然の結果ともいべきほとんどハクチといってよい

王子、カルロス二世が王太子になったのはなぜなのかを考えてみてください。

そうまでしても、王家というのはブルー・ブラッドつまり、支配者の出自というものを

固執するものなのです・・・・。

(ついにはカルロス二世の代でスペイン・ハプスブル家は潰えたのですよ)

フェリペ四世は艶福家で愛人の間には何十人もの子供があったにもかかわらず!です。

その中には、健康で賢い子供がもちろんいたことでしょう。

また、イギリスのヘンリー八世が、何度も何度も王妃をとっかえひっかえしたのは、

あの王様が色情狂とかそんな低レベルの問題から、そうしたわけではないのです。

そんなことなら、たくさん愛人をはべらせておけばいいだけのことなのです。

どうしても、彼には正式な后から生まれた王太子が必要だったのです。

そのためには、彼はバチカンを向こうに回して、自らイギリス国教会の首長にもなったのですね。

(とかいって、結局彼は王太子には恵まれなかったのですが・・・)

もちろん、ヴァチカンやフランスやイタリアなどのカトリックの国は

ヘンリーとイギリスの低い身分の貴族の娘との野合のような結婚などは

当然、無効だとして認めませんでしたけれども。

(エリザベス女王はあくまでもヘンリーの私生児だ、という意見も当時からありました)

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その反対に、あってはならないことですが、王妃が産んだ子供であれば、

その父親は誰なのか?を問うことはできないのですよ、絶対に。

あってはならないことですから。父親は王以外にはいないのです。

告発する人などいません・・・・・恐ろしすぎて。

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ルイ14世の父親がもしかしたら、マザランだったかもしれない・・・・な~んていうのは

DNA鑑定でもしない限りは歴史の闇に沈んでしまった憶測ですが、

アンヌ・ドートリッシュは美女で有名で、しかも尻軽女でも有名だったんです、当時から。

だから、「三銃士」のお話の中でもバッキンガム公こと、ジョージ・ヴィリヤーズと浮名を流したり、

それはそれは、大変だったそうです。

ルイ13世はこういったストレスからハゲてしまって、鬘をつけていたことが、

のち、ファッションとしての鬘着用に広まるわけですが・・・・。

マザランはイタリア男で、ちょっとバッキンガム公似のいい男だったそうです。

こういった、さまざまな憶測をもとに再構築したお話がこちらですね!

またしても、佐藤賢一センセイのご登場です!!!

二人のガスコン〈上〉 (講談社文庫)

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  • 作者: 佐藤 賢一
  • 出版社/メーカー: 講談社
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二人のガスコン〈中〉 (講談社文庫)

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  • 作者: 佐藤 賢一
  • 出版社/メーカー: 講談社
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二人のガスコン〈下〉 (講談社文庫)

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  • 作者: 佐藤 賢一
  • 出版社/メーカー: 講談社
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ここに出てくるダルタニャンは、佐藤センセイがそうとう惚れぬいたのか、

30歳ぐらいで、そ~と~にかっこよくて美化され(すぎ)てますね 笑

わたくし、デュマの本の中にはダルタニャンは「美男子である」とは一言も書いてなかったように

記憶してますが、この本は「美男子、美男子」のオンパレード。

連発しすぎるのが佐藤センセイの悪い癖だと思いますが、ちょっと読んでいてくどいほどです 爆!!

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この本はタイトルが「二人のガスコン」とあるとおり、

ひとりはいわれるまでもなく、ダルタニャンが主人公ですが

もうひとりはな~んとシラノ・ド・ベルジュラックなんですよ~。

何でも、ガスコーニュにはベルジュラックという地名のつく場所があるんだそうです。

でも!というところがミソです。(詳しくは本書を読むべし)

この話も、よ~~く考えて作ってあって面白い。

もちろんルイ14世の鉄仮面伝説というのも出てきますが、

それはもう人口に膾炙しすぎている、とセンセイはお考えになったのか

かる~くスルーされて、

ええ?っという、そしていかにも「佐藤節」が効いている結末でございました。

この話、世継ぎは王妃の腹からしか生まれない、ってことをアタマに入れて読むと

なるほど!とうなずいてもらえるものと思っております。

鉄仮面伝説についても言及したいキモチいっぱいなんですが、

長くなりすぎますので、この辺で。

みなさま、どうもありがと~ございましたぁ~。


La vie aventureuse de D'artagnan  ~ダルタニャン物語  ⑧ 人物紹介 ラウル~   [シリーズで考える深い考察]

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ラウルはデュマの作った人物です。そして

イマイチ、求心的魅力に欠けるので彼が主人公になった映像作品はありません。

ので、今回は17世紀・イギリスで活躍した宮廷画家、

アンソニー・ヴァン・ダイクの絵をお借りしました・・・・・。 

前回、アトス人気のことはいいましたが、

それに引けを取らないくらい、人気があるのがミラディ。

やっぱり元夫婦だったから?なのでしょうか?

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さて、お殿様アトスはどうも女性の外見に弱いらしく、見目麗しい女性がいると

すぐにひとめぼれしてしまうようです。

ミラディと別れたあとも、好きな人を作るでもなく、ひとりでブスっと無聊をかこっているのです。

そして、要領がいいアラミスやダルタニャンがさながら花から花へわたる蝶のように、

女から女へ渡り歩いているのをみると説教する。

「貴様ら、っつたく。ケダモノだな。誠実さってものがないのか?」

「いや、あるぜ。アニキよ」

「どこがだ?」

「おりゃ~、ちゃんと女と向き合うときは、とことん尽くしてるもんな。

自分のことなんていっつも後回しよ。いっつも女が喜ぶことばっか考えてるもん。

文句なんていわれたことはないぜ。

だからさ~、朝起きたときなんかの女の顔の晴れ晴れとしていることといったら。

ほっぺたなんて、こう、ツヤツヤのピンク色でさ。

あ~、満足なんだなってわかるぜ。それのどこが不誠実かっつの!」

「ダルタニャン・・・・。オマエというやつは・・・・怒」

「アニキもさ、もうちょっとその、しゃっちょこばってンのやめたら?

なんならおれがいい女紹介するぜ、こうオシリとムネがバーンとあって・・・・・

むこうだって相手がアニキだったら、願ったりかなったり・・・」

「オマエはもう黙ってろ!」

「なんだよ、おりゃ、アニキのことを思えばこそ・・・・・イテッ」 

(アトスがダルタニャンの頭にげんこつする)

ふたりのやりとりをそばでほくそえんで見ているだけのアラミス・・・・。

すみません、少々オハナシが下品になりました。

でも、ラウルがこれくらい、とまではいかなくても、

父譲りの「かたくなさ、がんこさ」がなければもっと人生は楽しいものになっただろう・・・・と

思うのです。

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ということで、今日はラウルを紹介しますね。

ダルタニャン物語、第三部のタイトルは「ブラジュロンヌ子爵」というのですが、

このブラジュロンヌ子爵こそ、ラウルのことなのですよ。

さてさて、ラウルは上記のように、父親がアトスこと、ラ・フェール伯爵である、ということは

まぎれもない事実なのですが・・・・。

実はね、私生児なのですよ。

ええ~。なぜ?と思うでしょう?

さぁ~、今解き明かされる「ラウル出生のヒミツ!」 笑

アトスが35歳くらいのころ(だと思うのですが)

そのときアトスはある密命を受け、とある修道院で修道僧の恰好をして

潜伏しておりました。

そこへ、ワケアリらしい男装の麗人が尋ねてきたのです。

そのとき、そのマリー・ミションと名乗る男装の麗人があまりにも

魅力的だったので、修道僧の恰好をしていたにも関わらず、アトスは我を忘れて

むりやりマリー・ミションと一夜の逢瀬を楽しんでしまうのです。

・・・あら、アトスって日頃厳格なクセに、いざとなったら大胆ですわね。

この「マリー・ミション」と名乗る美女は、シェヴルーズ公爵夫人で、200px-Marie_de_Rohan-Montbazon_Chevreuse.jpg

王妃アンヌ・ドートリッシュの大のお気に入りだったのです。

かのバッキンガムを王妃を密会させようと画策していたのが、

このシェヴルーズ公爵夫人とアラミスなのです。

実はね、昔シェヴルーズ公爵夫人とアラミスは深い仲だったんですよ。

ふたり揃って、とんでもなく陰謀好き。

それはともかく、アラミスは、昔の恋人が自分の親友の子供を産んだと知って、

びっくりしたでしょう・・・・。たぶん。

それも、女嫌いで通っていた、清廉潔白居士のアトスの子だっていうんですから。

シェヴルーズ公爵夫人っていうのは、実在の人物で、王妃の側近だったというのは、

本当のことです。

ともあれ、とびっきりの美女にしか心を動かされないアトスにそんな衝動を取らせてしまった

シェヴルーズ公爵夫人は当時、宮廷一の美女と噂に高い人だったのです。

公爵夫人は修道院で起こった一件は、全く予想外のことでして、

結局、強引な坊さん(と思っていた)の愛を受け入れてしまったのですが、

相手のことなど一切解りません。

遊び慣れている公爵夫人は「まあ、一夜限りのことだし、そんなこともあるわよ」で済ませていたのですが、

実は妊娠してしまったので、びっくり。どうしましょう。

当時は妊娠したら、人知れず産み落とすしか方法がありません。

産んだあと、赤ん坊をさる修道院へ置いていきます。いわゆる捨て子?

アトスは修道院からの報告を受けて、自分に息子ができたことを喜び、

シェヴルーズ夫人には自分が引き取ったことを伏せるようにと命令を下して

自分で育てることにしたのです!

でも、シェヴルーズ夫人は不義の子とはいえ、自分のおなかを痛めて産んだ息子のことを

密かに気にかけていました。

「わたくしのぼうやはどうなったのかしら・・・・・?」

でも、ラウルがモノの分別が付いた15・6歳ぐらいになったころ、ラウルはシェヴルーズ公爵夫人に

事の一切を打ち明け、ふたりの間にできたラウルを見せるのでした。

聡明で美しい、ふた親のいいところだけを取って生まれてきたような少年をみて

シェヴルーズ公爵夫人は涙を流します。

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とこのような具合なのですが・・・・。

その後、ラウルは7歳年下の幼馴染である、ブロンドの少女に淡い想いを抱きます。

その少女こそ、ルイーズ・ド・ラ・ヴァリエール。

ああ、ルイ14世の寵姫で有名なこの方が出てきたら、その時点で

この恋は破局で終わるのだな・・・・という悲しい予感を読者に与えてしまいますね。

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 筒井筒のような幼いふたりの愛をはぐくんできたと

信じてきたラウル。こんな顛末になるとはつゆ知らず。

悲劇の道をまっしぐらに彼は走っていきます。

実際、それはそのとおり、なのです。

ルイーズは、もともと地味で目立つことがキライな性格で、しかも優しい女性でした。

そこが、ラウルには好ましく映った美質だったのです。

ですから、ルイーズが華やかな美女がわんさかいる宮廷にあがったときは、「なんだ?この田舎のイモ娘?」

でバカにされていたのですが、「わたしが、わたしが」という自己主張の強い美女にたぶん食傷気味の

ルイ14世は、可憐な野の花のようなルイーズに食指を伸ばしてしまいました。

毎日、ごちそうばっかり食べてると、たまにはお茶漬けサラサラが恋しくなる、あの感覚ですね。

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 恋は盲目。ルイ14世とルイーズ

ルイーズは、もともとが堅実な性格だったので、ゆくゆくはラウルの妻になるだろうと思っていたし、

そのことに全く疑問に感じたこともなかったのですが、やはりそこに「人を好きになる」というか「恋をする」

というのは、人間の理性の効かないものでありまして、

ラウルに感じていた愛情というのは、「恋」ではないということを本当に人を好きになって初めてわかるのです。

そのことをルイーズは涙を流してラウルに赦しを求めるのですが、

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ルイーズ・ド・ラ・ヴァリエール 

ラウル自身、本当の恋をしたことがない、といいますか、そういう制御不能の感情を理解しえないのです。

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ああ~、親子して恋愛下手ですね。ラウル、そういうところは母親に似たらよかったのに・・・・。

少なくとも、失恋の痛みは次の恋で癒すという手段もあったというのに。

しかし、父親がアトスだったから、そういう助言をしてくれる人がいなかった。

「お前にも、またステキな女性がそのうちあらわれるさ・・・・」と。

ダルタニャンがそばにいれば、きっとそういってやれたでしょう。

・・・・・・ということで、自暴自棄になっていたラウルは

父親アトスの知り合いで、公爵でもある元帥に誘われて、軍隊に入り、

アフリカ行に加わることにするのです。

アトスはなんとなく、この旅は不吉なものに終わることを予感していました。

きっとこの息子は帰ってこない・・・・。

・・・・なんですかねぇ~。どうして言葉を尽くして息子を説得しないんでしょう?

もともとアトスは最初から、この縁談に乗り気ではありませんでした。

というのも、ルイーズの父親であるラ・ヴァリエール侯爵はすでに亡くなっており、

母親である未亡人は財産ありとはいえど、平民に嫁いでいました。

それに、少しルイーズは足が悪かったんです。

わが息子ならもっと格の高い、もっと美しい女性が似つかわしい、と思っていたのです。

(だけどラウルだってアトスの庶子だったわけだし、しかも母親は公爵夫人とえど、そのころは国家の反逆者として

国外追放の憂き目にあっていたので、それほどすごい、とも言えないと思うんですけれどね・・・・)

しかし、もともと息子のいいなずけを横取りしたカタチになる国王にケンカを売りに行って、

決裂して田舎に隠棲します。

もう、元の鞘にはもどれないふたりなのだから、

こんなやり方はマズいに決まっているのに・・・・。

本当に生きるのがヘタなアトスです。

このように、なにか不思議な諦観に包まれて、この親子はむざむざと終焉に向かって

ことを進めてしまうのです・・・・・・・。

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La vie aventureuse de D'artagnan  ~ダルタニャン物語  ⑦ 人物紹介 リシュリュー~  [シリーズで考える深い考察]

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いかにもってかんじのキツネ顔 笑

このダルタニャン・シリーズおかげさまで、皆さまによく読んでもらえているようで

とても光栄に思います。

で、ちょっとびっくりしているのがアトスの人気の高さです。ほかの三人の比じゃありません。

アトスだけがずば抜けて高い!

一番人気がないのがどういうわけかダルタニャン。

みなさま、アトスのようにまっすぐで高潔な人柄に惚れるんですね・・・・・。

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さて、今日は悪の権化、枢機卿リシュリューの回ですね。

こどものための「三銃士」だと「悪 vs 善」という勧善懲悪的対立のほうがコントラストがはっきりしていて

わかりやすいのでリシュリューは、ショッカーの首領と同じような扱いですが本当はどうなのでしょうか?

でも、わたくし、子供版の抄訳での「三銃士」を読んだのがたぶん小学校五年生ぐらいの時だったと思います。

そのとき、リシュリューが悪者だということに露疑いはしませんでしたが、

「どうも王妃さまは、よその国のエライ人を好きになって、

王様からもらったダイヤの首飾り(ホントは房飾り)を

勝手に愛の記念として与えてしまったというけれど、

これって王様に対してすごく失礼だし、イケナイことじゃないの?」

というものです。

それに、三銃士+ダルタニャンって王様のケライのはずなのに、なんで

王妃様のためにわざわざイギリスまでいかなきゃならないのだろう?

リシュリューに味方をするとまではいかなくても、

王様に「王妃さまはいけないことをしていますよ」

とご注進してもよさそうなものなのに・・・・と11歳なりに不思議だったのを記憶しています。

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 史実に残るリシュリューも自分がいつ、足元をすくわれるかわからないので

フランスの国内外にスパイを放ち、諜報活動をさせていたというのは有名なハナシだそうだ。

ね?そういわれればそうだな・・・とみなさんも思われませんか?

デュマはとにかく迫力ある文章が得意ですので、あんまり不自然にも思わないで

お話にのめり込んでしまうのですが、よく考えるとおかしいと思うこといっぱい。

じゃ、本当のリシュリューってどういう人なのか考えてみたいナと思います。

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枢機卿およびリシュリュー公爵アルマン・ジャン・デュ・プレシー(1585年9月9日 1642年12月4日)

カトリック教会の聖職者にしてフランス王国の政治家。1624年から死ぬまでルイ13世の宰相を務めた。

こういっちゃうと、なんか簡単ですね・・・・。

この人、アルマンっていうんだ。椿姫の恋人とおんなじ名前ですね。

いや、こんなんじゃ、全然わからないので、もうちょっと詳しく調べてみましょう。

リシュリューはフランス西部出身の下級貴族の三男としてパリに生まれました。

へぇ~、ですね。大貴族出身なのかと思えば、下級貴族ですか・・・。

しかし、身分としては下級貴族でしたが、父親のフランソワは軍人にして宮内裁判所長官、

そして母方の祖父は著名な法学者だったそうです。ではリシュリューの政治的手腕はこの父方、母方からと両方の

血統のものだったかもしれないですね・・・・。

9歳のとナバラ学寮へ入学。哲学を学ぶ。

・・・・ナバラということはこの人もガスコン?

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ですが、父親が三十年戦争で戦死したため、アンリ四世はその報償としてリシュリュー家に

「リュソン司教職」を与えました。当時、職は売ったり買ったりできたみたいです。

最初はこの司教職をほかの聖職者に与えて、その実入りといいますか収入で

リシュリュー家は食べていたようです。でも、政府のほうから、実際にリシュリュー家の中の誰かが

司教に就かなければいけないいわれたようです。

で、すったもんだの末、まだ未成年のアルマン少年がこのリュソン司教になります。

実際まだ未成年ということで、司教になるのを危ぶまれたのですが、年若くても非常に聡明なことが

わかり、ヴァチカンも特例としてアルマン少年が司教になることを許可しました。

そして、マリー・メディシスの寵臣であるコンチーノ・コンチーニという冗談みたいな名前のイタリア人の

目に留まり、そこからリシュリューの出世街道が開けたわけです。

しかし、こののち、リシュリューは宮廷内の対立で揉まれに揉まれます。

まず、ルイ13世と母后マリー・メディシスの反目。ルイは「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」のことわざのとおり、

マリーの息がかかった連中を毛嫌いしました。マリーの寵臣コンチーノはもちろんのこと、コンチーノの

お気に入りのリシュリューも大嫌い。

ルイは自分の側近であるダルベールを用いることでコンチーノの追い落としを図ります。

ついに、コンチーノ処刑。ルイは「リシュリューを悪魔のように憎んでいる」とまで言いましたが、

国家存亡の危機にたち、そんなことも言っていられなくなりました。

なんせ、リシュリューは有能でしたので。

このころはまだ国王の地位も大貴族によって常に脅かされ、危ういものでした。

そして、フランス国内でのプロテスタントとカトリックによる宗教分裂で常に争っています。

リシュリューはこれは何とかしないといけないと思いました。

「私の第一の目標は国王の尊厳、第二は国家の盛大である」

つまり内憂外患のフランス国を目の当たりにして、

リシュリューは国王の地位を不動のものにして、中央集権国家を確立させ

国内の楯つく反乱分子を一掃してしまうのでした。

そして、カトリック王国としてのフランスを統一します。ですからプロテスタントの抑制にも努めました。

しかし、その一方で同じカトリック王国であるハプスブルグ家の繁栄を恐れ、

フランスよりも力を持たせないよう、あの手この手で抑制しようとします。

ときには、プロテスタントに手を貸し、ハプスブルグ家の進出するのを抑えようとするという

鉄面皮なこともやりのけました。

国家の繁栄ということであれば、手段を択ばないのです。

リシュリューには信念がありました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「フランスはあらゆる他国を抑えて強大にならねばならぬ」

「この信条に従わないものはすべて、国家の敵である」

う~~ん、すごいですねぇ。

ですから、ルイ13世とアンヌ・ドートリッシュとの結婚は250px-MariaAnnaofSpain06.jpg

カトリック勢力のフランスとスペインとの軍事的・政治的同盟のなにものにもほかなりませんでした。

が・・・・・。

結婚して16年、何度か妊娠はしたもののすべて流産。

そして、度重なる不倫。リシュリューもこの尻軽のスペイン女にはほとほと手を焼かされていたようです。

ルイ自身も男としての沽券にかかわることであり、この軽薄な妻のせいで

極度のストレスを強いられ、すでに22歳で若ハゲの危機に見舞われ、

鬘を着用することが、のちのファッションとして鬘につながっていくのです・・・。皮肉ですね。

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 これもひょっとして鬘なの~~ん?

いや~~ん、みちゃダメよ~ん。

髪ってストレスに弱いのよ、知ってた?

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そこで、話はもとに戻るのですが、リシュリューは「三銃士」の中でアンヌを追い詰めることで

どうさせようとしたのでしょうかね・・・・・。

王妃としての名誉がリシュリューによって汚されるから、ということで

ダルタニャンと三銃士はイギリスに渡ったような気がするのですが、

イマイチそこが理解しきれなかったような気がします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

バッキンガム公ジョージ・ヴィリヤーズは200px-GeorgeVilliers.jpg

敵国フランスと戦争中だというのに、王妃と密会するという

ふざけたマネをしてくれるのです。

そのとき、フランス西部のビスケー湾に面する港、ラ・ロシェルはフランスのユグノーの拠点となっていました。

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 リシュリューはもともと聖職者より軍人志向だったので、

軍の指揮を執るのも得意だったみたいよ。

戦う枢機卿。

同じプロテスタントのユグノーを助けんとバッキンガム率いる英国艦隊はラ・ロシェルを救援しようと

駆けつけますが、自らが包囲軍の指揮官となって攻め入ったリシュリューに敗れ、ヴィリヤーズも

英国陸軍フェルトンにあっけなく暗殺されてしまいます。

お話では、ミラディがフェルトンを使って暗殺させたことになっていますが。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

このように、リシュリューは冷徹なマキャベリストであった半面、国益のが増すことのみを考えていた

類まれなる無私の人であったという器の大きな辣腕政治家でした。

為政者として広い度量を兼ね備えていたのです。

彼はどんなにルイ13世に疎んじられようが、フランス国王としてのルイの威厳を傷つけるようなことは

どんなことであれ、決して赦しはしませんでした。

国力を富ませるため、権謀術数のあらゆるすべてを駆使したことは言うまでもありませんが、

また文化的にもヨーロッパ第一級の国になるため、「フランス語の純化」に努めたり、

アカデミー・フランセーズを創設したのも実はリシュリューなのです。

・・・・一国の宰相までに登りつめる人は、クセがあってもそれなりに大きな器だったということです。

実際、ダルタニャン物語でも、リシュリューが亡きあと、銃士たちはしきりとリシュリューの時代を

なつかしんでいるのです。


La vie aventureuse de D'artagnan  ~ダルタニャン物語  ⑥ 人物紹介 ミラディ~ [シリーズで考える深い考察]

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昨日、大河ドラマの「平清盛」を見ていましたけど、

前にも書いたと思いますが、松田優作の忘れ形見、翔平君が最近、

ヤバイほどおとうさんにそっくりになってきた!

ちょっと前までは、姿かたちが優しげで、「あ、やっぱりお母さんの血が濃いんだな」

というか、両親の血が上手にブレンドされてイイカンジと思っていました。

けど、あの人、なんだか風情は優しげなのに、目が殺気を孕んでいる。

怖いです。で、なにかをした瞬間の表情がもう、お父さんがこの世に戻ってきたみたいで、

生き写しですよ、なんだか急に精悍になったような気もするし・・・・。

サテ、雅仁親王はマサカの大穴で後白河天皇となりました・・・・どうなっていくのか。

こういうことをツラツラ考えていると、義朝の子供の頼朝の命乞いをした池禅尼はアマかった。

小さいときはコロコロしてて可愛くても大人になったらどんな脅威になるか。

自分はだんだんと年老いてくるのに、昔、自分が殺した男が地獄の底から蘇ったように、

若武者の姿で自分に迫ってくるのは悪夢を見ているようで怖いだろう。

ということで、平家物語の維盛が息子、六代御前も文覚上人に命乞いをされたにもかかわらず

情けをかけられなかったということは、源氏は

「後生畏るべし」ということを身に染みてわかっていたからです。

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あ、ミレディの話をするはずだったのに・・・・スミマセン。

今日はミレディです。

ミレディって名前だろうと思われるけど、たぶん英語のmi-ladyから来ていると思うの。

(my lady の崩れたカタチ)男はミロードですね。

でも、ここではミレディじゃなくて、あえてフランス語読みでミラディと読んでみたいと思います。

ミラディはじゃ、イギリス人なの?

ある意味、イギリス人なのかも。イギリス人と結婚していたからねぇ。

ミラディ・ド・ウインター、

ほかにもアンヌ・ド・ブリュイ、シャルロット・バクソン、ミレディー・クラリックなどなど

たくさんの偽名があるけど、本当の名前はわからない。

原作では、ブリリアントな金髪の美女だけど、奸智に長けてすごく残酷ってことになってます。

全然、同情の余地なし、ってところ?

いつもは女にアマく、一度はミラディと同衾したこともあるダルタニャンでさえ、

あまりにミラディがクルーエルなので、処刑することもやむを得ないとしている・・・・・。

なんたって、大好きだったコンスタンスちゃんがミラディに殺されちゃったんだもん!

ということなのですが・・・・。

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わたくし、これはね、原作読んでいて思ったけど、ミラディという人物の描き方、マズいよ。

確かに、女性でも「変質者」はいるでしょう・・・・。快楽殺人をするような人ね。

でも、いやしくもあのリシュリューの密偵だったんですのよ。

で、男達を描くのはあんなに達者だったデュマさんもイマイチ女性は得意じゃなかったのか

これじゃ、あまりにあまりでございますわ。ステレオ・タイプすぎる。

だいたいね、

そんな国家の工作員にそんなアブナい女を使うはずがないでしょう?

ということで、わたくしは一応原作を読まれた後はこっちのサイドストーリーを

読まれることをお勧めします。

新・三銃士―ダルタニャンとミラディ (少年編) (講談社文庫 (ふ48-5))

新・三銃士―ダルタニャンとミラディ (少年編) (講談社文庫 (ふ48-5))

  • 作者: 藤本 ひとみ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/05/15
  • メディア: 文庫



新・三銃士 青年編―ダルタニャンとミラディ (講談社文庫 ふ 48-6)

新・三銃士 青年編―ダルタニャンとミラディ (講談社文庫 ふ 48-6)

  • 作者: 藤本 ひとみ
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/05/15
  • メディア: 文庫


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これね~、ほとんど話の進行は原作と一緒。ただ、主人公は「ダルタニャンとミラディ」なわけです。

で、不思議なのがアトスとミラディの関係よ。

なんでって、アトスってね、そりゃ~大貴族なのよ。

日本でいえば、どっかの藩の大名みたいなお殿様なの。

そんなお殿様が、なんでミレディの姿かたちだけにホレて、周りのご家来衆のいうことも聞かないで

結婚しちゃったのかなぁ~って思うの。

で、わたくし思うんですけど、アトスって女の免疫が全くないんですよね、たぶん。

ダルタニャンやアラミスみたいにテキトーに女遊びしておけばこんなことにはならなかったのに・・・・。

ホラ、「酒は呑んでも呑まれるな」っていうでしょ。女もそう。

女にゃ惚れても、溺れるな・・・デス。

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アトスは免疫がないぶん、女性っていうものにそうとう「アコガレ」をもって「聖母マリア」のような

尊敬と愛情をささげたい、と思っていたんじゃないかなぁ~。アトスならありえそう・・・。

で、当時、16歳だったミラディをこれまた20ぐらいのアトスが見初めちゃった。

アトスって「美しいものに罪があるわけがない」などという、これまたカトリック的なものの見方を

していたんでしょう・・・・。

だけど、こういうのも、今日的には「自分勝手でひとりよがりな愛」よね。

聖母みたいな役割を押し付けられる女のほうがたまんないっていうの。

で、あんまり調べもせずに、結婚したと。バッカだなぁ~。

で、本当のミラディはそんな聖母のような清らかで穢れないオトメではなかった・・・・とこういうことです。

ここまでは原作と一緒。

でもね、ミラディだって言い分があるのよ、きいてちょうだいよ!っていうのが

この藤本ひとみ版のサイド・ストーリーですね。

たしかに、ミラディは生まれは貴族でもないし、むしろ貧しい暮らしをしていて

幼いころからその日その日暮らしを強いられていて、どうにかしてこの苦境から逃れたい、と

考えていた少女だったのです。

腕の百合の刻印も罪びとだから烙印を押されたのでなく、

当時一緒に住んでいた男が、自分から逃れられないようにするため、むりやりミラディに

つけたものだったんです。

で、あるときラ・フェール伯爵の若様がミラディを見初めて、「結婚してくれ」と。

「お妾じゃなくて伯爵夫人ですか~」

そのときのミラディは、まぎれもなくホンマもんの白馬の王子の登場に身も心もフワフワと・・・

しあわせに酔いしれたことでしょう・・・・。

ですが、ある朝、若様は傍らで眠っていた新妻の雪のような柔肌に、

百合の烙印を見つけて仰天してしまう。

いつも用心していただろうに、きっと気が緩んだんでしょうね・・・。

「お、奥! これはなんじゃ?」

「と、殿。申し訳ございませぬ。お許しくださいませ。ですが、これには深いわけが・・・」

「たばかりおって!うむむ、許せぬ!そこになおれ!成敗いたす!」

・・・・これじゃまるで時代劇ですけど、まぁこういう風に、問答無用で首を絞められたわけですよ。

で、アトスはミラディは自分が手をかけて殺した、と思っていたらしいけど、

実はその後息を吹き返して、その場から逃れたんですね~。

ミラディは憎みました、アトスを。アトスは自分のうわべばっかりみて、ミラディの心を愛そうとしなかった。

ミラディを理解しようとしなかった・・・・・。

男ってものは・・・。復讐してやりたい・・・・。

そこへ、通りかかったのが宰相リシュリューですね。

「ほう、美しい髪をしておるな、その金髪本物か?よくみれば容貌も整っておる」

リシュリューはしばらくミラディと会話してみて、この女は頭の回転もいい、使えると思った。

そこでミラディは宰相の密偵として雇われることになったのです。

ですが、この宰相、別に部下思いでも何でもありません。密偵なんてものは危なくなってきて

生かしておけなくなったら即、何かの罪状を付けて処刑されるのがふつうだったので、

ミラディには失敗は許されない。

いつもいつも、計算に計算を重ね、実はドジでトンマなロシュフォールを出し抜き、

宰相には忠実でありつつ、最後の持ち駒というか切り札は常に用意しておくというこの用心深さ、

用意周到さ、読んでいてミラディ苦労してんなぁ~と涙、涙です。

リシュリューは、スペインからヨメに来た王妃アンヌ・ドートリッシュが

いつまでもルイ13世の子供を産まないので返品したいと思っている。

そこで、イギリスのバッキンガムを炊きつけて不倫させ、それを世間に発覚させたら

結婚は無効になるしな、と思っている。ので、これをなんとか成功させるためミラディにあれこれ

画策させる。

ここら辺は面白いのでぜひ、本書を読んでみてくださいネ。

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でも、ミラディより一回り賢いダルタニャンによって、ミラディの計画もすべてが水の泡。

最後、殺したくはなかったのだけれど、コンスタンスに自分の正体がばれてあえなく毒殺に至る。

そして四銃士につかまって、首切り役人に引き渡されてしまう・・・・。

でも、これじゃあまりにミラディがかわいそう・・・・。

実は藤本さんはそんなミラディに粋な計らいをしてあげるのです。

ミラディの処刑は四銃士が夜、遠目で見ていただけなので、しかと処刑を確かめたわけじゃないのです。

ダルタニャンはわかっていたんです。ミラディの悲しみや切なさが。

密偵が失敗したとき、宰相からどんな報復があるかも。

密偵としてのミラディは死にました。が・・・・

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その後、ダルタニャンは密かに美しい年上の女と同棲しているという噂が・・・。

ほかの三人が「どんな女だ?」と水を向けても

ダルタニャンは「いやぁ~」と照れるばかりで、決して口を割ろうとしませんでした。が、

その女はダルタニャンの子供を宿して出産するときに、赤子もろとも死んでしまいました。

ダルタニャンはたいそう悲しんだけれど、女は束の間だけど幸せを味わったに違いないのです・・・。

女の名はいわなくたってわかりますよね?エヘ


La vie aventureuse de D'artagnan  ~ダルタニャン物語  ⑤ 人物紹介 ポルトス~ [シリーズで考える深い考察]

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さて、いい加減うんざりしてこられた方もいらっしゃるかもしれませんが、

まだまだ続く、ダルタニャン物語。

今日はポルトスですね~

ポルトスってなんでポルトスなんだろ?

デュマはやっぱり、ガスコーニュ出身でトレヴィル隊長の知り合いであるアイザック・ポルトーという人を

モデルにしたとかどうとか・・・。よくわかりません。

でも、ポルトスも源氏名でありまして、本名はデュ・ヴァロンといいます。

ポルトスも元はといえば、ダルタニャンと同じような小貴族の、次男か三男なんでしょうね。

ポルトスってキャラクター的に、ちょっと頭が足りないコミカルな人物だと軽んじられるキライがありますが、

どうしてどうして、決してそんなことはない、と断言しましょう。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

もともと「友情」というのは、二者間でもいいですし、まあ彼らの場合四者間でもありますが、

お互いの実力が伯仲していなければ絶対に成立しないものなのです。

まして、そこに「優越感」とか「劣等感」などの感情が入り込むと絶対にその友情は壊れてしまいます。

ですから、ダルタニャンやアラミスはともかく、

正しい人アトスとも生涯その友情が途切れることがなかったのですから

ポルトスはやはりなにか、その中にキラリと光るものをもっていたのです。

ポルトスはあだ名を「フランスのヘラクレス」といいまして、

怪力無双の巨人です。

で、ちょっと前の映画「仮面の男」ではジャラール・ドパルデューが演じていましたが

あの人は日本でいうところの「西田敏行さん」みたいな方なのではないかと・・・・。

まあ、豪傑も演じるけれど、美男とは程遠いのでは?

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そうです、ポルトスは原作にもはっきり書いてありますけど、

ガタイのいい美男子なんですよ!

ポルトスは身長2メートルにも届こうか、というほどの長身です。

ですから、今回映画ではポルトスをレイ・スティーブンソンが演じておられましたが、

片耳ピアスでなかなか雰囲気があってピッタリと思いました。

この映画はほとんどが「ありえない~!」っていうほど時代考証もあらすじもめちゃくちゃですが、

やはりどこか三銃士の原作のエッセンスだけは残してあるのですよ。99パーセント嘘でも、残りの1パーセントが

本物だったら、それなりにリアリティがでるというか。

そういう意味で、この映画のキャラクター設定というか配役は原作をよく考慮して作ってあるなぁと

思ったものです。

まぁ、スタイルがいいので、おしゃれさんなわけです。

でも、根が庶民っぽいからアラミスやアトスのような、洗練されたというか渋くて凝ったおしゃれはキライなのですね。

で、ハデ~でキラキラしたものがスキ。

女性関係も、ある未亡人と結婚しましたが、その未亡人がなくなった後はやもめ暮らし。

ある意味、ダルタニャンとアトスはその「狡猾さ」とか「抜け目のなさ」みたいなもので

結託できるのですが、アトスとポルトスは馬鹿がつくほど「正直」で「お人よし」なところが

似ているのですね~。

でも、どういうわけか、ダルタニャンとアラミス、アトスとポルトスという組み方はしないで

たいてい、ダルタニャンとアトス、アラミスとポルトスというふうに分かれるのが面白いですね。

たぶん、ダルタニャンとアラミスは一緒にいるとお互い、言葉のはしばしのニュアンスで

相手が何を考えているかを推し量り合い、いつも腹の探り合いになってしまって、

油断ならなかったからなのでしょう 笑

未亡人が莫大な財産を遺してくれたので、アトスやアラミスも驚くほどのお金持ちになるのですが、

本人いわく、「男爵になりた~い」

これも、アラミスのような恐ろしい野望じゃなくて、純粋に「エライ人になりたいな」

ぐらいのかわいいものなのですね。

全く憎めない人です。

アラミスやダルタニャンはそういうポルトスのかわいい望みにかこつけて

なにかと甘言をいってだまくらかして、悪の片棒を担がせたりもするのですが、

ポルトスは友が「謀略」に加担させているなんて一度も考えても見ないんですね。

「あいつらアタマがいいから、任せておけばいいさ」みたいな。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

そういうのを、ポルトスの欠点だとして彼を軽んじたりするようですが、

でも、本当にそうなんだろうか、と読みながら思うのです。 

ポルトスの天性の美質とは「類まれな善良さ」のひとことに尽きると思いますね。

あるいは「無邪気」といいましょうか・・・・。

うう~ん、いい言葉が浮かびませんねぇ~。

そうね、彼はいつまでも「子供のようにイノセント」な人なのです。

そりゃ、ダルタニャンの頭の回転の速さ、アトスの貴族的勇敢さ、アラミスの奸智に長けた策略のうまさ、

どれをとっても素晴らしいのですが、

ポルトスはどこまでも優しくて寛大な人なのです。

たしかにポルトスは「大男総身に知恵が回りかね」みたいなところもあって、

難しいことはわからない、で済ませちゃう人です。

でも、一度その人を「信用に足る男」と信じたら、ずっと信じる男なのです。

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アラミスは自分の野望のため、ポルトスをそうとは知らせず、国王のすり替えをやらせます。

アラミスはこの計画は絶対に成功するという自信があったので、ポルトスには迷惑が及ばないと

考えたのでしょうが、「これを手伝ったら男爵になれるぞ」とそそのかしたのでした。

しかし、計画が失敗し、自分だけ逃亡しようかどうしようかと一瞬迷うのですが、

「置き去りにして、ポルトスが自分が何にも知らないでアラミスのいう通りにしたと自供しても

国王はそれを本当だとも思わないだろうし、知らなくてやったとしても反逆者として処刑されてしまうだろう。

ポルトスは逃げるということを知らない男だし、仕方がない」

で、ともに逃亡するのです。ポルトスは最初から最後まで????状態。

でも、あるとき自分の足がふらついて立っているのも覚束なくなる。

「これは・・・・・ぼくが最期のときだという前兆かもしれない。

 じいさんもおやじも死ぬときはこんなふうに足が萎えていたんだよ」

と不吉なことをいう。

 そしてとうとうフーケの領地に作ったベルイールの要塞にたどり着き、もうすぐ脱出成功と思ったとき、

崩れ落ちそうな洞窟の中で、やはり全く足が動かなくなり

「早く来い!ポルトス!」と絶叫しているアラミスに

「どうも最期のときがきたようだ。さよならアラミス」

といって崩れる岩盤の下敷きとなってしまいました。

そして、かれは従容として自分の運命に従っていったのです。

こういうところがポルトスの男らしさというか、すごい勇気ですよね。

散り際がまことに見事。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

死後、アトスとダルタニャンは、ポルトスが作成しておいた遺言書に目を通すと、

広大な領地すべてを、自分の息子のように可愛がっていたアトスの一粒種、ラウルに残すと

したためてありました。

結局、ポルトスという人は、現世における栄達欲とか出世欲などというところから

もっとも縁遠い人で、何よりも友情を大事にした人であるのです。

アトスも人格的に立派ですが、それは育ってきた環境やら、教育のような後天的なものが多少含まれるのに対し、

ポルトスの優しさ、寛大さというのは生まれながらのもので、

とてもシンプルで純粋で、そしてとても崇高なものです。

ポルトスの心はさながらキラキラ輝くダイヤモンドのよう。

ダルタニャン、アトス、アラミスは

誰よりも死にそうにもない、屈強な男の突然の死に衝撃を抑えることができませんでした。

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La vie aventureuse de D'artagnan  ~ダルタニャン物語  ④ 人物紹介 アラミス~ [シリーズで考える深い考察]

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このシリーズも4回目です。

最初は全然読んでいただけなかったようで

わたくしばっかりが面白くてみなさま、面白くないんだろうなぁ、としょんぼりしてましたが、

結構アトスの回は、評判よかったみたいで気をよくしています↑

みなさまありがとうございます! 本当にうれしいデス。

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さて、今日はアラミスですね。

アラミスは国王付銃士隊イチの美男子、ということになっています。

近衛隊の中でも精鋭中の精鋭ばかりが集まる銃士たちのなかでも

ひときわ生彩を放つ美貌の貴公子なのですから、よっぽど男前だったのでしょうね。

・・・・・でも~、この人は、銃士隊の四人の仲間のうちでは一番クセがあるというか

難しい人ですね。

アラミスをコトバで表現するなら、「神の代理人にして権謀術数の大家」、というところでしょうか。

アラミスはやっぱり大貴族の息子で本当の名前をデルブレー卿といいます。

たぶん、長男ではなく、聖職者となるために生まれた次男、三男あたりなのでしょう。

この人もアトスと同じように、大貴族の家に生まれたゆえの

貴族的な典雅さとか、教養などを備えておりますが、

違うところは、アトスは真から心がまっすぐで無欲なのに対し、

狡猾で野望を抱いているというところでしょうか。

しかも実は神父なのに・・・・。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

いや、神父だからこそ、アトスのように幼子のように素直な信仰を持ちえないのかもしれないです。

アトスは生まれたときからラ・フェール伯爵の跡取りだったし、そこに熾烈な兄弟の争いは

なかったわけですね。

しかし、アラミスはどんなに美しく生まれついて才能豊かであっても、

長男ではない、というただその一点の違いだけで、家督を譲ってもらえないのです。

たぶん、そのことを恨んだでしょう・・・・。

自分の境遇に素直に「そうですか」と従えなかったでしょう。

だから、そもそも生まれたときからの出発点がアトスとアラミスは違うのです。

アラミスはたぶん小さいときは女の子のようにやさしげなお顔の美少年だったから

親は将来は聖職者に、と望んだのかもしれませんが、

アラミスは実は心の奥に自分でも御しがたい獣を住まわせていたのです。

アラミスは銃士隊に入る前、神学生だったのですが、それにもかかわらず

決闘して、人を殺しているのですね。

それで神学校にいられなくなって、名前を伏せて銃士隊へ入隊。

本来ならば、軍人になったほうがよかったのかもしれませんが、

しかし、軍隊というところは上官の命令は絶対ですね。

陰謀という情熱に取りつかれたアラミスには、やはり軍隊生活は無理でした。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

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アラミスは銃士隊をやめた後、どこをどうやったのかはわかりませんが

やはりきちんと神学校を卒業して神父になっておりました。

しかし、さすがアラミスというべきか、その後、所属するのが「イエズス会」なのですね~

イエズス会というと日本人はすぐ「フランシスコ・ザビエル」→「偉い人・聖人」という連想をしがちですが、

ヨーロッパで「イエズス会」っていうと、実は「悪の結社」と相場は決まっているのです。

たしか、ダ・ヴィンチコードの「イルミナティ」って結社も「イエズス会」をモデルにしているか、

「イエズス会」から派生した秘密結社なのだと思います。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アラミスはそういった、カトリック教会という大きな力をバックに権力を持とうとするんですね。

ですから、アラミスは極秘裏にニコラ・フーケと手を組み、

フーケの所領のベル・イールに難攻不落の要塞を築き、

虎視眈々と宰相の地位を狙っていたに違いないのです。

ですが、マザラン亡きあと、自分がその後釜になろとするも

宰相や摂政を排して、

親政を執って自らのやりたいようにやるルイ14世を疎ましく思うようになります。

初めは、マザランのように宰相の地位を狙っていたアラミスですが、

ルイはもはや宰相を必要としていないと見てとるや、アラミスは二つのプランを立てます。

二つ同時には実現できませんが、一つがダメでも一つが実現できればそれでいい。

①ルイは実は双子のフィリップがいて、フィリップ王子はバスティーユに終身監禁される身だった。

 (これがあの有名な「鉄仮面」伝説のもとです)

 だが極秘裏にその二人を入れ替え、 影の実権は自分が執ろうというもの。

②アラミスはまた、前区間長にその人柄を見込まれ(?)イエズス会の総区官長という地位を踏襲した。

 そして、現在の法皇を暗殺して自分が法皇の地位に就き、フランスだけでなく、全ヨーロッパのカトリック教国を

 自分の手中に収めようと野望を抱いてもいた。

などという、とほうもない策略をめぐらしておりました↓

アラミスはアトスとちょっと考えが違っておりまして、「従容としてその運命に従う」ということを「是」として

認めない人です。

というか、プライドが二番手、三番手で甘んじていることを断じて許さないのです。

運命は己が切り開いてこそ。

あ~~んと大きく口を悠長に開いているだけでは飢えは治まらないというのです。

自らが食べ物を探すという能動的な行動を取らなければ。

勝機に向かって突進してゆき、もしその心が神意に適うならば、

おのずと道は開けると考えているのです。

もし、神の真意が今の法皇にあるのなら、神のご加護がある限り、自分がどうあがこうと

絶対に暗殺できないはずだし、

また、双子をすり替えることも、もし天の意思に反するならば、フィリップは逆立ちしても

王位に就けはしない・・・・ということだ。

だから・・・・ということで決行するのですね。

アラミスは確かに陰謀を企てるのが得意ですが、

でもそこには、彼なりの大義があり、理想があってのことです。

ですからたとえば、「仮面ライダー」のショッカーの首領のように (笑)

全くの「悪」というわけではないのです。己の欲だけを満たせばよい、という

そういう我欲だけで動いているわけではないのですね。

10巻の中盤でアラミスの様子がどうもおかしい。

世の中に揉まれて生きてきたダルタニャンとアラミスは「すれかっらし」で「悪知恵」が働くというところでは、

よく似たところがあるのです。だからアラミスがなにか途方もない計画を立てているのではないか、と

ダルタニャンは直感で解っていました。

尋問するダルタニャンにアラミスはこう言います。

「ぼくは昔と同じように、君を愛している。

万一、ぼくがきみを警戒するとすれば、それは他人のせいではない。

ぼくはなにをしようときっと成功するだろうが、その暁には、きっと君を仲間に入れるよ。

君も同じことを約束してくれるだろう?な?」

それに対してダルタニャンはこう返します。

「おい、アラミス。我々はお互い敵じゃない、兄弟なんだ。

君は何を企てているのだ、言ってもらいたい。
このダルタニャンが誓う、君の力になることができなければ、ぼくは断じて中立を守る」
 くっ・・・・。つい胸が熱くなって本心を打ち明けそうになるアラミス。
ですが、ここは我慢・・。
目的は慎重に、ヒミツは最少人数で守らなければ・・・・。

そういうところは、リシュリューやマザランにも通じるところでしょうか。

「善に強ければ悪にも強し」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ただし、アラミスの思いは神意に適うことではありませんでした。

あっけなく、王位簒奪事件は頓挫。

絶体絶命の窮地に陥ってた財務大臣のフーケを味方につけ、

フィリップとルイをすり替えたものの、

フーケはルイに疎まれていると知りながら、アラミスのしでかしたことを

「神をも畏れぬ行為」だと面罵し、自らバスティーユに監禁されていたルイを助け出します。

フーケもアトスと同じように「王権神授説」の信奉者で、王位とは不可侵の神聖なものだと

考えていたようですね。

フーケはルイを助けたものの、この後王には一顧だにされず、代わりにコルベールが台頭してきます。

そういう青写真が見えていたのに、フーケは最後まで王に忠誠を尽くした忠臣なのですね。

いやはや、大したものです、ご苦労なことですね。

アラミスは大きなため息をついたことでしょう・・・。

水をも漏らさぬ計画だったのに、あっというまに崩壊するのを見て、アラミスは自分の負けを

悟ります。

そして、命からがら、フランスを脱出。

そして、スペインに亡命して、今度はアラメイダ公爵としてフランスとスペイン間の

関係を良好に保つよう東奔西走するのですが・・・。

しかし、友人三人は当の昔にこの世を去り、アラミスの過去の熱い友情を知り得るものは

誰もいません。

ある意味、一番長く生き抜いたアラミスは、もっとも厳しく寂しい人生を生き抜いた人でもあったのです。

信じるところを突き進んで、あと一歩というところで挫折したのですから。

きっと神意に適うはずという信念を抱きながら、それを天に否定されたのです。

しかも自分は一度は神に仕える身分であったというのに・・・・。

皮肉な設定ですね。

アトスが巧まずして神に愛される人であったのに対し

アラミスは相当の努力をしても、神に愛に適わなかった人です。

何やら、「カインとアベル」のような結末ですね。

聖書のルカによる福音書には「神を愛するに幼子のようにあれかし」とあります。

おのれの才能をのみ恃みにして、神と取引をするように、あるいは神を試すように接したアラミスは

天から見れば「小賢しい」の一言に尽きるのかもしれません。

しかし、天国の門をくぐった後できっとアラミスにはねぎらいの言葉はあっただだろうと思うのです。

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La vie aventureuse de D'artagnan  ~ダルタニャン物語  ③ 人物紹介 アトス~ [シリーズで考える深い考察]

 

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今日はアトスを紹介させてください。

 三銃士たちは、本名を伏せており、アトス、アラミス、ポルトスっていう名前はいわば源氏名なのです。

 なぜか、といえばみなそれぞれにワケありだったからなのですね。

 一部で決闘に及ぶシーンがあるのですが相手側が「アトス?ポルトス?アラミスですと?

 そんなヘンな名前がありますか! 本当の名前をお聞かせ願いたい」と訴えるシーンがあります。

 そうですよね、命を懸けた決闘するからには名乗りを上げるのが礼儀ですから。

 相手がどこの誰とも知らず、死んでいけるわけがありませんよね。

 このあと、三人はこそこそと決闘相手に自分の本名を告げるのですが・・・・。

 アトスは本当はラ・フェール伯爵という大貴族なのですが、アトスは自分自身が女性関係に失敗し、

 やけっぱちになって銃士隊に志願するわけですが、軍人になるのが不名誉と思ったのか、

 ラ・フェール伯爵という自分の身分を隠したことになっております。

 アトスってフランス人の名前としてはかなり奇妙な名前らしく、かの宰相リシュリューに名前を尋ねられた時、

「それは山の名前であろう、ふざけるのも大概にするがよい」と叱られちゃったりもするのですね。

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マシュー・マクファデンは原作に近いと思います。高貴なところが。

ダルタニャン物語を読んでいると、「真の主人公はダルタニャンではなく、アトスなのではないか」と

しばしば思ったものです。

デュマはアトスのことを尊敬を愛情を込めて描いていると思うのです。

アトスはいわば、革命前の貴族のスピリットを体現した人物。

ノブリス・オブリジェの具現化、貴族の中の貴族なのです。

わたくし日本人はなんとなくピンとこないけど、

このアトスをいう人物を理解するには「王権神授説」の正しい理解と

「ヨーロッパ貴族」とは何かということをしっかりと知っておく必要がありそうです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

わたくしは、プロテスタントの母親に育てられましたが、大学はカトリックでした。

そのとき、宗教の時間があって、そのときフランス系カナダ人の神父さまはこうおっしゃいました。

「カトリック神父というものは、誰もがなろうと思ってなれるものではない。

神父というのは軍隊でいえば、将校のような立場なのです。

学識があり、神学・哲学をおさめ、そして修道の誓いを一度立てたからには、

わたくしは生涯、肉欲を絶ち、童貞でありつづけるでしょう。

そして、家族を持ちません。なぜなら、この世のすべての人がわたくしの家族なのです。

神がわたくしにその家族のために死ねとおっしゃられば、それに従います。

それができる人間だけが神父になれるのです。しかし、それは神の恩寵であって

わたくしはそのように生まれついたというだけです」

それを聞いたとき、腰を抜かすほどびっくりしました。

これだけの傲慢ともいえるほどの自信を持って

こんなにすごいことをはっきりと言い切れる人間が日本人の中にいますか?

「王権神授説」というコトバを思い出すとき、必ずこの神父さまのコトバが頭をよぎります。

実際、この神父さまは日本に来てから死ぬまで故国に戻ることもなく、

一生を日本のカトリック教化に努められました。

ですから、王様になる、ということは神から定められたことであり、

一国を統べる度量や威厳やらなんやらを生まれてくる前に授かった人であるのです。

ここで、わたくしたちがしばしば陥る思い込みに「王様は贅沢三昧をして民草の苦しみを顧みない」

まぁ、実際そういう人も多かったとは思いますが、王族・貴族がそれでもエライと人々から尊敬されたのは

いざとなればその民草を守るために死ぬことも辞さないから。

その一点に尽きると思います。日頃贅沢をするのも、いざとなれば民を守るために

剣を取って闘い、死んでいったからです。

そういう貴族の心意気を体現した人がアトスなのです。

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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

また、王族・貴族という人々はたとえば「フランス人」とか「ドイツ人」「スペイン人」というよりも

大きなくくりとして「貴族」なのです。彼らは同郷の人としてのよしみより、

貴族としてのネットワークのほうを大事にしますね。

ここらへんもわかりにくいですが、例えばスペインから嫁に来たルイ13世のお妃である

アンヌ・ドートリッシュだって、育ちこそスペインかもしれませんが、あの方にはスペイン人の血なんて

一滴だって流れていません。

王族は王族同士でしか結婚しないのでありまして、

どこかの国の王女さまはどこかの王子さまとしか結婚しません。

その国の貴族などど結婚するのはよほどの例外であって、たいていは

よその国の王女か王子です。

たいてい、おばさんとかおじさんにあたる人と必ず血がつながっていまして、みなさんみな親戚なのですよ。

いつぞや、クーデンホーフ・カレルギー伯爵と結婚した青山ミツコの伝記を読んでおりまして

なるほど、と思ったことがありました。

彼らはハプスブルグ帝国の貴族だから少々特殊なのかもしれませんが、

クーデンホーフ・カレルギー伯爵夫妻は当時、ボヘミアの領地に住んでいました。三人男の子がいまして、

長男はボヘミアに所領があるから、ボヘミア人として生きるよう教育されたといいます。

次男はハンガリーに領地があるからハンガリー人として生きるよう、ハンガリー語を習わされたそうです。

日露戦争が勃発して、日本がロシアに勝ったことを知ってミツコが喜んでいると

夫のハインリヒはミツコを責めはしなかったけれど、息子たちにこういったそうです。

「お前たちのお母様は日本人だから、日本が勝利して喜んでいるが、我が家にはロシアにも

親戚がいる、だからどこの国が勝とうが負けようが、その国に対して敬意を損ねることはできないのだ」

といって、日本の国歌とロシアの国歌を交互に流して、その間兄弟に敬礼をさせていた、というくだりがありました。

わたくしは、なるほどと思いましたね。ヨーロッパの貴族はやはり庶民とは一線を画すものであると。

ですから、アトスがフランス貴族でありながら、イギリス国王の命を助けようと、

わざわざ万難を顧みずイギリスに赴くのは、王冠を戴くものには、それだけの価値があるという

信念がなければできないことでしょう。

しかし、実際そういうノブリス・オブリジェという貴族としての大義を忘れ果て、

遊蕩にふけり、民草の痛みを

忘れ果てた末、フランス革命が勃発してしまうのです。

「自由・平等・博愛」をいう崇高なテーマを掲げた革命でしたが、

その後、ナポレオンの台頭、第二王政となかなか人民が中心の世の中になりません。

そんな荒れた世の中の様子を見て、デュマは

このダルタニャン物語の中に古き良き時代のあこがれを多少投入していたのかもしれません。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

アトスは文武両道に秀で、しかも貴族としての威厳に満ち、物腰も優雅です。

ただし、この人は女運に見放された人で、いつも慎重なくせに

どういうわけか、ミレディにひとめぼれして素性をよく知らずに結婚してしまう。

そして、ミレディが腕にユリの刻印を持つ、罪びとであることを知って愕然としてしまうのですね。

その後、宮廷一といわれる美女と、ひょんなことから一夜の逢瀬をもち、

ラウルという一人息子を設けるのですが、それ以外は全く女っ気なし・・・・。

そこらへんは「女たらし」とあだ名のついたアンリ四世と同郷にするダルタニャンなど

実に上手に女から女へと渡っていくのを見て、アトスはぶすっと不機嫌で時には小言もいう。

ここらへんの設定も実際はものすごい艶福家で有名だったデュマが逆にアトスのような

これまた、自分は絶対なれない清廉潔白な人にあこがれてのことかもしれないです。


La vie aventureuse de D'artagnan  ~ダルタニャン物語  ② 人物紹介 ダルタニャン~ [シリーズで考える深い考察]

今日はダルタニャン物語の人物紹介しようと思います。

まず、当然トップバッターは主人公のダルタニャンですね。

一応、ダルタニャンは実在の人物だそうです。

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前にも書いたかと思いますがD'artagnanと書きますので発音は

「ダルタニアン」ではございません。ダルタニャン、ですね。

フランスの名前は名前の前に de がつくと貴族の称号になるそうです。

これって英語の of っていうのに相当するんじゃないかな~と思うんですけど・・・。

ホラ、日本でも平将門ってかいて「たいらまさかど」

あるいは藤原道長とかいて「ふじわらみちなが」と呼ぶじゃないですか。

でも、北条時宗は「ほうじょうときむね」であって「ほうじょうのときむね」じゃないでしょ?

それは平や藤原というのは天皇から下された姓であって、北条はそうじゃないから。

(北条氏は平氏なんです、実はね・・・)

おっと、話が横にそれました。

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つまりD'artagnanはdeが付いているから一応貴族だよん、とそういうことを申し上げたかった。

で、デュマが書いたダルタニャン物語はダルタニャンとしか書いてないけど、

ダルタニャンは本当はダルタニャンではない。

ダルタニャンというのは、母方の苗字であって、本当の名前は

シャルル・ド・バーツ・カステルモルっていうんです。

でも、世間では

シャルル・ダルタニャン・ド・モンテスキューと名乗っていたのだとか・・・。

でも、これも佐藤賢一氏が文献資料にあたって調べられたことですので

本書にはそんなこと一行も載ってません。

どうでもいいことなのよね。ホントは。

でも、ファンはそういう細かいことが知りたいのです。

このお話が始まる頃というのは、ルイ13世の時代です。

で、宰相リシュリューが登場するのが1624年以降ですので、

お話もそれくらいの時代ですね。

昔、ガスコーニュ地方はナヴァール王国といいまして、

フランスではありませんでした。

ナヴァールというのは、ナヴァラ王国、つまりは現在のスペインを形作る四つの国、

すなわち、カスティーリヤ、アラゴン、レオン、ナヴァラの一つを意味していて

もともとスペインの国だったと考えたほうがいいかもしれないですね。

でもですね、アンリ三世とカトリーヌ・メディシスの嫡男たちが次々と亡くなっていって

ついに、ヴァロア朝は断絶してしまいます。

それで、ナヴァール王国にはジャンヌ・ダルブレと

ブルボン家のヴァンドーム公アントワーヌ(ナヴァル王アントワーヌ)の息子であるアンリが

ヴァロアを継ぐにふさわしい正統な血筋であったため

あらたな王朝を興し、ここにブルボン朝が始まるわけですよ。

で、アンリ四世の故郷という地縁をいかして、このへんの貴族の次男、三男で

多少、腕に覚えのあるものは士官を志したといいます。

ダルタニャンもその類に漏れませんでした。

ダルタニャンというのは、ガスコーニュあたりでは多少幅の聞く名前だったらしいです。

実際、彼の兄弟もダルタニャンと名乗っているらしいです。

ダルタニャンはガスコーニュのお酒で有名なアルマニャックの近くのルピアックというところの生まれです。

ダルタニャンはなんとバーツ・カステルモル家の次男や三男どころではなく、四男でした。

こうなっては、やはりパリに行って軍人になるしか出世の道はなかったのですね。

それでやはり、同郷のよしみ、ということで銃士隊長であるトレヴィル殿を

たよるわけなのです。

おそるべし、ガスコンの地縁。

(僧侶になるという道もあるにはありますが、たぶんダルタニャンの性分に合いませんね)

アニメも映画も人形劇でも、三銃士は人気があるからしょっちゅうなにかしら

作られていますよね。

考えただけでも、「仮面の男」、NHKの人形劇の「新三銃士」

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ついこの前までロードショーをしていた「三銃士 王妃の首飾りと飛行船」でしたっけ?

仮面の男のダルタニャンはガブリエル・バーンが演じていて

壮年でしたけど、ふつう思い出すのはまだ少年ですよね。

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でも、それは物語ではほんの一部分であって、

物語の大半は40代から死ぬまでなのです。

ダルタニャンは熱血漢で若いころは決闘ばかり繰り返しているようなところもあるけれど、

実は結構、クールだし、頭の回転は速い。

(教養はあったかどうかはわかりませんが・・・。パリに来てから徐々に身につけていったようです 笑)

そしてたぶん、無神論者です。

あるとき、神にかけてそれを誓えるか、と質されたとき、

「おれは神にかけて誓うなどということはしない。

 おれがイエスと一度口に出していったことは最後までイエスだし、

 反対にノーといったことは最後までノーだ」

おお、フランスでも武士に二言はなかったのでした・・・・。

なんかここらへんが、貴族の中の貴族とたたえられたロココ的なアトスとは違う

19世紀的なヒーローのような気がしますね。

ついでにいえば、わたくしはこのダルタニャン物語を読んでいると

ついつい、「ルパン三世」を思い出しちゃったのです。一番最初のミドリの上着に黒シャツのシリーズの。

あのルパンは結構非情でしょ?

あのワルサーP38で時によっては女も殺しちゃうじゃん?

「悪いな」とかさらっと言って。

(宮崎駿のルパンはわたくしにとってはベツモノ)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ダルタニャンは第一部の最後には宰相リシュリューにその才覚を認められ、

ヒラの銃士から副隊長にまで上り詰めるのです、若干二十歳で。

リシュリューだってめっちゃくちゃ悪者にされがちですが、

一国の宰相で、酸いも甘いもかみ分けた人ですからね、

情なんかには流されない鉄の意思がある。

国益になると思ったら

結構どんなことでもしますが、

そんな人だって、というかだからこそダルタニャンの実力はきちんと掌握してます。

なぜ、ダルタニャンと宰相は反目しているか、といえばダルタニャンは国王側の銃士というだけのこと。

ダルタニャンは自分が宮仕えの身であって、おかみのいうことには逆らえない、ということを

身を以て知っています。

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だから、たとえ昨日までは親友であろうと立場が変われば、明日は敵同士になることも

承知しています。

自分と友人がつかえている主人同士が仲が良ければ、関係は良好ですが、

いつ敵味方となって刃を交えるかもわからないのがこの時代の宮仕えの定めなのです。

だから、親友といっても五臓六腑ぜんぶ本音をぶちまけることもしないし、

惰性で毎日付き合うこともない。

ダルタニャンと三銃士の仲間は実はそれほど時を共にすごしてはしていないのです。

でも、どんなに短い時間であっても、その時間はほかの人と過ごす10年20年に匹敵し、

死ぬまで彼らは親友でありつづけました。

そこらへんがとても潔くて、美しい、と思う。

なにか彼らの間には静かな諦念みたいなものが常に漂っていて、そのことに深く感銘を受けます。

彼らの別れ方はそっけないほどあっさりしている。

「それじゃさよなら、アトス」

「ああ、さよならだ、ダルタニャン」

それだけ。彼らはベタベタとお互いに心の傷をなめ合うなどということを

許さないし、また恥だと思っている。

孤独でいることを是とする貴族的な態度。しびれます。

短い言葉の奥には、ことばにはできやしない深い深い思いが秘められているのです。 

とはいえ、ダルタニャンはがんじがらめの宮仕え的な立場だけれど、

そのちょっとしたほころびを見つけ、敵となった友に塩を送ることをいとわない、

そんなユーモラスな伸びやかさを持っているのです。

「たぶん国王は明日の朝、貴殿を逮捕する令状をわたくしに与えるでしょう。

しかし、今は明日の朝ではないのです。ということは、なんらわたくしが貴殿を拘束する権利もないということです。

今晩の間になるべく遠くまでお逃げなさい。下にアラブ産の馬がつないである。さぁ、それに乗って!」

っていうふうにネ。

20歳で副隊長なる出世をとげるも、そのあとは全く忘れられた存在になり、

粉骨砕身働けど、隊長になることもなく、20年もたってしまいます。

そして、そしてダルタニャンはどうなっていくのでしょうか?


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La vie aventureuse de D'artagnan  ~ダルタニャン物語  ① イントロダクション~ [シリーズで考える深い考察]

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去年の末頃から読み始めた「ダルタニャン物語」、やっと先日読み終わりましてよ。

ここで「ええ、なんでダルタニャン物語なの? 三銃士でしょ?」と突っ込みを入れたアナタ、

アナタのその感覚は正しい!

そうなんです。実は「三銃士」というのは「ダルタニャン物語」のごく最初の一部分にすぎないのです。

ダルタニャン物語は実は全部で11冊ありまして。

三部構成になっております。

①三銃士

ダルタニャンが故郷のガスコンを出て、パリに赴き、王の直属の軍隊である

銃士隊に入るまでが描かれております。

ダルタニャン物語〈第1巻〉友を選ばば三銃士 (fukkan.com)

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  • 作者: A. デュマ
  • 出版社/メーカー: 復刊ドットコム
  • 発売日: 2011/06/01
  • メディア: 単行本


ダルタニャン物語〈第2巻〉妖婦ミレディーの秘密 (fukkan.com)

ダルタニャン物語〈第2巻〉妖婦ミレディーの秘密 (fukkan.com)

  • 作者: A. デュマ
  • 出版社/メーカー: 復刊ドットコム
  • 発売日: 2011/06/01
  • メディア: 単行本



②二十年後

ダルタニャンと彼の仲間の20年後の話です。

ルイ13世も宰相であるリシュリューもこの世を去り、

王ではあるけれど、統治権をもたないルイ14世。王太后アンヌ・ドートリッシュとマザランが

政権を押さえています。そこへイギリス王であるジェームズ・スチュアートが助けを乞いに来ますが・・・・。

ダルタニャン物語〈第3巻〉我は王軍、友は叛軍 (fukkan.com)

ダルタニャン物語〈第3巻〉我は王軍、友は叛軍 (fukkan.com)

  • 作者: A. デュマ
  • 出版社/メーカー: 復刊ドットコム
  • 発売日: 2011/06
  • メディア: 単行本


ダルタニャン物語〈第4巻〉謎の修道僧 (fukkan.com)

ダルタニャン物語〈第4巻〉謎の修道僧 (fukkan.com)

  • 作者: A. デュマ
  • 出版社/メーカー: 復刊ドットコム
  • 発売日: 2011/07
  • メディア: 単行本


ダルタニャン物語〈第5巻〉復讐鬼 (fukkan.com)

ダルタニャン物語〈第5巻〉復讐鬼 (fukkan.com)

  • 作者: A. デュマ
  • 出版社/メーカー: 復刊ドットコム
  • 発売日: 2011/07
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③ブラジュロンヌ子爵

アトスには、ある貴婦人との間に私生児を儲けてていました。それこそがブラジュロンヌ子爵こと

ラウルです。ラウルは両親の美質をすべて受け継いだような素晴らしい少年ですが、やがて

成人になり、ルイ14世に遣えることになります。ところで、ラウルは幼馴染で将来は妻にと、心を決めた

少女がいました。その人こそ、ルイーズ・ド・ラ・ヴァリエール。

しかし、恋とはままならぬもので、ラウルこそはわが夫と心に決めていたルイーズですが、

それは、ただの兄に対する愛情と同様なものであって、ホンモノの恋情とは違っていました。

ルイーズは初めて体験する制御不能な恋の炎に焼かれて苦しみます。

さて、その相手とは・・・・?

ダルタニャン物語〈第6巻〉将軍と二つの影 (fukkan.com)

ダルタニャン物語〈第6巻〉将軍と二つの影 (fukkan.com)

  • 作者: A. デュマ
  • 出版社/メーカー: 復刊ドットコム
  • 発売日: 2011/07
  • メディア: 単行本


ダルタニャン物語〈第7巻〉ノートル・ダムの居酒屋 (fukkan.com)

ダルタニャン物語〈第7巻〉ノートル・ダムの居酒屋 (fukkan.com)

  • 作者: A. デュマ
  • 出版社/メーカー: 復刊ドットコム
  • 発売日: 2011/07/01
  • メディア: 単行本


ダルタニャン物語〈第8巻〉華麗なる饗宴 (fukkan.com)

ダルタニャン物語〈第8巻〉華麗なる饗宴 (fukkan.com)

  • 作者: A. デュマ
  • 出版社/メーカー: 復刊ドットコム
  • 発売日: 2011/08/01
  • メディア: 単行本


ダルタニャン物語〈第9巻〉三つの恋の物語 (fukkan.com)

ダルタニャン物語〈第9巻〉三つの恋の物語 (fukkan.com)

  • 作者: A. デュマ
  • 出版社/メーカー: 復刊ドットコム
  • 発売日: 2011/07/01
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ダルタニャン物語〈第10巻〉鉄仮面 (fukkan.com)

ダルタニャン物語〈第10巻〉鉄仮面 (fukkan.com)

  • 作者: A. デュマ
  • 出版社/メーカー: 復刊ドットコム
  • 発売日: 2011/09/01
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ダルタニャン物語〈第11巻〉剣よ、さらば (fukkan.com)

ダルタニャン物語〈第11巻〉剣よ、さらば (fukkan.com)

  • 作者: A. デュマ
  • 出版社/メーカー: 復刊ドットコム
  • 発売日: 2011/09/01
  • メディア: 単行本

作者はもちろん、19世紀の大文豪、アレクサンドル・デュマ・ペールです。

そして訳者は鈴木力衛さんという方です。

鈴木さんは1936年、東大仏文科を卒業し、そのごパリ大学で学んでおられます。

そして、本書の訳業により第六回日本翻訳文化賞を受賞しておられます。

でも、その第六回というのが1969年でございますので、今からざざっと40年前ですね。

ですが、その文体は全く古びておらず、vividであり、なおかつ、華麗な筆致なのには驚くばかりです。

訳というのは、向こうの文化や言葉に堪能のみならず、母国語の力も大変に必要とされるものなのだな、

と改めて感じ入りました。

わたくし、ちょうどこの本を読む前に、映画のほうの「三銃士」も見ておりました。

ので、世の中、ちょっとした三銃士ブームだったみたいで、なかなか図書館で本を借りられず、

今日にいたってしまったのですね。

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わたくしたちがよく知っている三銃士とは、田舎のガスコンから出てきたダルタニャンと

三銃士が力を合わせて、王妃の首飾りを取り戻しに、イギリスのバッキンガム公爵のところへ

出向いていって、そこで首飾りを取り戻してパリへ帰ってくる、というところまでではないでしょうか?

わたくしが幼年のころまでに読んだ本はたしか、そうでした。

ところが、本当の話というのは、子供には読ませられない部分があって、

それが結構重要なカギだったりするのです。

ダルタニャンはD'artagnanと書きます。

ふつうは「ダルタニアン」と発音されてますが、違います。

わたくしたちが今日抱いているイメージっていうのは、

勇敢で、世慣れていなくてナイーブでっていう無垢な少年像ではないでしょうか?

でも、本当のダルタニャンはパリに出向く前から、そうとう女遊びっていうものを知り尽くし、

あのミレディをたぶらかして、まんまと同衾するというしたたかさをもった、ナカナカのヤツなのです 爆

で、それで結構、悪知恵も働く。そしてとても現実主義者なのですねぇ。

19世紀の当時として、デュマが思い描いたとすれば、

アトスが去りし日々の昔の貴族の典型だとすれば、20111025_1020437.jpg

19世紀的ヒーローのひとつのタイプがダルタニャンなのではないかなと推察します。

ダルタニャン物語はそうとう思い入れの深い本だったので、ちょっとずつこれから書いていくつもりです。

みなさん、よろしくお付き合いくださいませ!

そうそう、忘れてました。

もし、この「ダルタニャン物語」を全部読む前に、できるなら、この本を読んでお勉強をしてほしいです。

そのほうが、より本書を楽しむことができますから・・・・。

佐藤賢一さんが執筆しておられますね☆

ダルタニャンは実在した人物です。シャルル・ダルタニャン伯爵。

でもいわゆる「人物」じゃなかった、歴史の波に飲み込まれた人なのです。

でも、デュマの共同執筆者であるマケが三銃士のもととなるダルタニャンのひな形を、見つけ出し、

デュマに薦めたのだといわれています。

ダルタニャンの生涯―史実の『三銃士』 (岩波新書)

ダルタニャンの生涯―史実の『三銃士』 (岩波新書)

  • 作者: 佐藤 賢一
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2002/02/20
  • メディア: 新書




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