ギターの詩人、パラグアイが生んだ偉大な魂 ~バリオス作品集~ [芸術]
昨日はギターによるスタンダードな作品の演奏でしたが、
今日はちょっと毛色を変えてみませう。
日本じゃほとんど知られていませんが、パラグアイが生んだ、偉大なギター奏者、兼作曲家ということでしょうか。
このCDを演奏しているギタリストのジョン・ウィリアムズ(スター・ウォーズの作曲家とは別人)は
バリオスに対してこのような賛辞を述べております。
「アグスティン・バリオスはギターのショパンだ・・・」
「彼ほどギターという楽器と一体化し、しかも多彩な音楽を生み出しえた作曲家はほかにいない。
ヴィラ=ロバスのギター曲もたしかに独創的だし優れているが、
ギターの性能を多面的に生かし切っているという点ではバリオスが勝る。
バリオスは彼の時代の最良のギタリスト=作曲家だ。
否、ひょっとしたらあらゆる時代を通して最良の存在と位置づけされているかもしれない」
続けて
「そして、バリオスの楽曲のうち高度なものには、私たち専門にギターを弾くものをも、
またその聴き手たちをも心から満足させてくれる本当のヴィルテュオジテ(名人芸の発露)がある」
いや~、スゴイ!
手放しの賞賛ですね。
でも、それもこのアルバムを聞いてみれば、さもさも、げにげに、とうなづいちゃいます。
わたくしはギタリストじゃないし、ギター弾いたこともないから詳しいことはわかりませんが、
一聴すると、そんなに難しい曲には思えません。
ですが、これ見よがしのパぁ~っとした派手なところはないけれど、
でも、一度耳にしたら、その美しくて、哀愁があるメロディーは忘れられるものではないのです。
バリオスは20世紀も近い、19世紀の終わりに南米であるパラグアイで生まれています。
彼自身は全くの白人ではなく、現地のインディオの血も混じっていたそうです。
そしてそのことを誇りに思い、その血脈が守ってきたインスピレーションというものを
とても大事にしていたという神秘的なエピソードがあります。
ラテン音楽は美しいけれど、どこか物悲しい。
特にバリオスの場合のそれは、悲哀というものではなくて、たとえば、美しい子供時代を思い出させる
ちょっと感傷的な甘い響きのニュアンスがあり、決して卑屈なものではないのです。
太陽が高く登った昼下がり、真っ白な教会の壁に落ちる、自分自身の濃い影。
広場の前の小さな泉からこぼれる冷たい水。
石畳からゆらゆらと立ち上る蜃気楼。
そして、無数の光を放ちながら流れていく川・・・・。
緑の木陰。赤紫の花、オレンジ色のスイカズラ。
若かった時分の美しい母の笑顔。
そしてチョコレート色の肌にオレンジのシャツを着て
暑さをものともせず、駆け回る少年たち。
・・・・大人になることを憧れをもってみていた少年のころの自分自身。
そんなものへの愛惜の情が音楽を通して見えてくるような気がするのです。
芸術はただ、きらきらひらひらと美しいだけでは芸術になりえない。
そこに魂がなければ。
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