ルネサンス的神秘主義に彩られた絵   Botticelli [ちょっとした考察]

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 甘い憂愁というのがこの人の絵の真骨頂。

Botticelli にはちょっとした思い出がありましてぇ~。

それはわたくしが中学生のころのことでありました。

当時のわたくしはなぜ、自分のような感受性に富み、優れた人間が

こんなイナカに燻ぶっていなければならないのかといゆー

不条理に悩まされておりました・・・。(オマエはカミュか? 笑)

なんせ、そこはとんでもないド田舎。一応県庁所在地には住んでおりましたが、

音楽堂もなく、美術館もない。

人々もそんなものには全く興味もなし。

ところで、学校の美術の先生がまた、とんでもない俗物っていうか、教条主義者で

「教科書以外のものは全部間違い」と言ってはばからなかった人でした。

当然のごとく、中学生のわたくしって人生で最高にトンガッていた時期でしたので

この人のこと、赦せなかったんですね~。ま、わたくしもカワイイ時期があったってことです。

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で、件のBotticelli の日本語表記がたぶん「ボティチェルリ」だったかなと思うんですけど

先生が「それ以外の表記は全く認めませんよ!ボッティチェリもボティチェッリもみんな間違い!」

って宣言するんです。そしてまた、かの有名なモナリザがまたどういうわけか美術の表記は

「ジョコンダ夫人」になっていた。それがまたわたくしの勘にさわった。

「モナ・リザって書く人いますけど、それは間違いですからね!」とまたのたまう。

テストのとき、キタナイわら半紙にこれまた黒白の印刷でプリマヴェーラとダヴィンチの絵が印刷されていた。

これってほとんど絵画の冒涜じゃないの?・・・トに!

プリマヴェーラのほうは「この作者は誰でしょう?」

わたくしは惑うことなく Sandro Botticelli と書きました。

ダヴィンチのほうは、La Gioconda or La Mona Lisa と書いたのです。

結果は零点でしたけどね。

放課後、親とともに呼び出されて散々に説教されました。

「どうしてこうも反抗的な子供にしつけているんですか!」という先生のお叱りに

母親は「うちの子供は間違ってないと思う。日本語で表記するより、原語で書いたほうが正しいに決まっている。

お言葉を返すようだが、先生の考えは狭隘だと思う」といってくれました。

その後、美術の評価は10段階の1でずっと留まっておりましたが、別に「フン」と思っておりました。

今から考えたら、親に「あんたの思っていることももっともだけど、もっと要領よくなりなよ」

といわれたほうがよかったのかもしれませんが・・・・。

(でも、親には感謝してます)

恐ろしいですね。その当時の教育って。

こんなんでよく授業になったこと。そしてよくグレなかったものです。

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さて、昨日までエライ時間がかかって辻邦生の「春の戴冠」を読み上げました。

春の戴冠〈1〉 (中公文庫)

春の戴冠〈1〉 (中公文庫)

  • 作者: 辻 邦生
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2008/04
  • メディア: 文庫

中央文庫から①から④まで出ているんですけどね、

わたくし、図書館で検索していたら、辻邦生全集のしかありませんでしたので

そっちので読みました・・・・。



ま、長い、長いわ~面白くないわ、で大変でした。

最近読んだ中では、ロマン・ロランの「ジャン・クリストフ」の次ぐらいに面白くなかった。

いや、全然面白くなかったかといえば、そうでもなく、政治が絡まっているときは

ものすごい迫力がありました。

ロレンツォ・ディ・メディチの追い落としを図ろうと

パッツィ一族がジュリアーノを暗殺したときのロレンツォのパッツィ一族の報復への場面とか

あと、ロレンツォが死んだ後に台頭してきたドメニコ会のジロラモ・サヴォナローラと

フィレンンツェ市民の葛藤とか、それはそれは息もつかせぬ迫力があって

ドキドキしながら読みました。

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さりながら・・・・ですね、この本のたぶん主題であろう、Botticelli のルネサンス的な

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Sandro Botticelli 自画像 

ネオプラトニズム的イデア論とでもいいましょうか、神秘主義的な考察になると

美術評論を読んでいるのか・・・と思うくらいタルイ。

わたくしが思うに、このBotticelli ことサンドロの描き方がイマイチだったような気がします。

たぶん、すごく多面体というか複雑な人だったんだろうとは思いますが、

たとえば、ほとんど獣かと思う程、女に溺れているところとか酒におぼれているところとか

もっと深く掘り下げて書いてみたら面白かっただろうに…たぶん辻先生はお上品な方だったので

そういう下品な描写は避けたかったのかもしれないけど・・・・。

まぁ、佐藤賢一ほどにドギツく書いてくれとはいわないまでも、もうちょっと突っ込んでくれたらなぁと思います。

でも、だいぶ古い本ですので、世間的にあそこまで描くのが限界だったのかなと思います。

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全然関係ないんですけど、途中、フィレンツェの国の中で反乱をおこした街として

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 Edward が自殺しかけた場所、パラッツォ・ディ・プリオーリ

ヴォルテッラっていうところが出てきまして、

ん~、なんか聞いたことあるなぁ・・・・と思ったら、

あの「トワイライト」に出てくるヴォルトーリ一族の根城でした。

わたくし映画見ていたとき、

どうせ架空の町だろ、ぐらいに思っていたのですが、

ちゃんとそのヴォルテッラでロケしていたことが

わかり、少しお利口になりました。

このヴォルテッラというところは、なんでも虐殺されたときに色々と黒魔術的な噂が流れていたところでして

さすが、ステファニー・メイヤーさん、博学ぅ~って、ちょっと感心しました。

・・・・思い切りヨコですみません・・・・。

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ところで、本を読んでいるうちに

Botticelliの絵ってどんなもんだったのかなぁ~と気になりだして

いろいろと見たのですが、

最初はフィリッポ・リッピの工房で修行していたらしいです。

だから、なんとなく、リッピっぽい絵ですかね?

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かつ、あんまりキレイじゃないです。

で、あるときですね、彼は自分の理想とも思える女性に出会うのです。

その女性こそ、シモネッタ・ヴェスプッチ!

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シモネッタは、結婚する前は快活で愁いを知らない少女だったのですが、

結婚して初めて、熱い恋をする。

その相手こそ、ロレンツォ・イル・マニフィコの弟。ジュリアーノ。

シモネッタは恋に悩みます。夫のマルコ・ヴェスプッチのことはキライではないけれど、

愛していない。彼女は自分の不貞に悩みます。

そういったことが、ただ単純に美しいというカオの造形の中に

「愁い」という深いニュアンスを植え付けることになるのでした。

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それを見た、サンドロは全身に「甘い痺れ」が走るのを感じ、「これこそが

自分の探していた女性像なのだ」と確信します。

そして、サンドロはシモネッタを描いて描いて描きまくり、

それから、あらゆるジャンルの女性像はシモネッタの姿なのです。

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こういう風ななりゆきは、ギリシャの古代以来の「モノの本質」を極めるという

ネオ・プラトニズムに依るところが大きいのだと思います。

つまりはシモネッタはサンドロにとっての「完全なる美」というか「調和」というか「女性の本質」だったのでしょうね。

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とこのように、延々エンエンとサンドロの考察が書かれていて読んでいるほうは全くの

忍耐です。わたくし別に botticelliのファンじゃないし。

ところで、前々からすごくすごく疑問に思っていることがあるのですよね、わたくし。

botticelli が描いた女性って妙にみんなおなかが大きいと思いませんか?

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たとえば、ルーベンスみたいにたっぷりと贅肉がついている女性を多く描いたってわけでもなさそう。

腕とか首とか脚とかみんな細いのに、なぜ妊娠したように描かれているのか?

ただし、「ヴィーナスの誕生」の絵だけはすっきりとしたおなかをしています。

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ダイガクにいたとき、先生に質問したら、この先生がまたイーカゲンな先生で

「単にこういう人が好きだったんじゃない?」 いい加減なことを・・・。怒

でも、この時代、確かにおなかの大きな女性が流行ったらしくて、

みなさんわざとスカートの下に座布団みたなものをいれておなかをふくらませていたのだそうです。

へぇ~、そうすると、着衣の女性はわかるけれど、じゃあ、「プリマヴェーラ」の三美神などは

どう説明するのだろうか?これは下手とかデッサンが狂っているとかそういう問題じゃない。

どうみても妊娠しているように見えるし・・・・。

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当時妊娠している状態が一番セクシーだと思われていたとか・・・・?

どうにもわかりません。

だれか知っている人がいたら、教えてくださいマセ。

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このプリマヴェーラは永らくキタナイニスをなんども重ねられて塗られておりまして、

ちょっと前(ここ20年ぐらいの間)にそのヤニ色のニスの除去作業をしたのですよ。

すると、そこから出てきたのは、信じられないような美しい色彩です。

以前はほとんどわからなかったのだけれど、女神たちの足元には可憐な草花が咲いています。

この草花はほとんどがフィレンツェで咲いているもので、植物の名前もキチンと特定できるそうです。

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わたくしも、修復後の「プリマヴェーラ」と「ヴィーナスの誕生」はウフィッツィで見ましたよ。

ナンダカンダいってまた見てみたくなりました。

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