La vie aventureuse de D'artagnan ~ダルタニャン物語 ⑧ 人物紹介 ラウル~ [シリーズで考える深い考察]
ラウルはデュマの作った人物です。そして
イマイチ、求心的魅力に欠けるので彼が主人公になった映像作品はありません。
ので、今回は17世紀・イギリスで活躍した宮廷画家、
アンソニー・ヴァン・ダイクの絵をお借りしました・・・・・。
前回、アトス人気のことはいいましたが、
それに引けを取らないくらい、人気があるのがミラディ。
やっぱり元夫婦だったから?なのでしょうか?
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さて、お殿様アトスはどうも女性の外見に弱いらしく、見目麗しい女性がいると
すぐにひとめぼれしてしまうようです。
ミラディと別れたあとも、好きな人を作るでもなく、ひとりでブスっと無聊をかこっているのです。
そして、要領がいいアラミスやダルタニャンがさながら花から花へわたる蝶のように、
女から女へ渡り歩いているのをみると説教する。
「貴様ら、っつたく。ケダモノだな。誠実さってものがないのか?」
「いや、あるぜ。アニキよ」
「どこがだ?」
「おりゃ~、ちゃんと女と向き合うときは、とことん尽くしてるもんな。
自分のことなんていっつも後回しよ。いっつも女が喜ぶことばっか考えてるもん。
文句なんていわれたことはないぜ。
だからさ~、朝起きたときなんかの女の顔の晴れ晴れとしていることといったら。
ほっぺたなんて、こう、ツヤツヤのピンク色でさ。
あ~、満足なんだなってわかるぜ。それのどこが不誠実かっつの!」
「ダルタニャン・・・・。オマエというやつは・・・・怒」
「アニキもさ、もうちょっとその、しゃっちょこばってンのやめたら?
なんならおれがいい女紹介するぜ、こうオシリとムネがバーンとあって・・・・・
むこうだって相手がアニキだったら、願ったりかなったり・・・」
「オマエはもう黙ってろ!」
「なんだよ、おりゃ、アニキのことを思えばこそ・・・・・イテッ」
(アトスがダルタニャンの頭にげんこつする)
ふたりのやりとりをそばでほくそえんで見ているだけのアラミス・・・・。
すみません、少々オハナシが下品になりました。
でも、ラウルがこれくらい、とまではいかなくても、
父譲りの「かたくなさ、がんこさ」がなければもっと人生は楽しいものになっただろう・・・・と
思うのです。
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ということで、今日はラウルを紹介しますね。
ダルタニャン物語、第三部のタイトルは「ブラジュロンヌ子爵」というのですが、
このブラジュロンヌ子爵こそ、ラウルのことなのですよ。
さてさて、ラウルは上記のように、父親がアトスこと、ラ・フェール伯爵である、ということは
まぎれもない事実なのですが・・・・。
実はね、私生児なのですよ。
ええ~。なぜ?と思うでしょう?
さぁ~、今解き明かされる「ラウル出生のヒミツ!」 笑
アトスが35歳くらいのころ(だと思うのですが)
そのときアトスはある密命を受け、とある修道院で修道僧の恰好をして
潜伏しておりました。
そこへ、ワケアリらしい男装の麗人が尋ねてきたのです。
そのとき、そのマリー・ミションと名乗る男装の麗人があまりにも
魅力的だったので、修道僧の恰好をしていたにも関わらず、アトスは我を忘れて
むりやりマリー・ミションと一夜の逢瀬を楽しんでしまうのです。
・・・あら、アトスって日頃厳格なクセに、いざとなったら大胆ですわね。
この「マリー・ミション」と名乗る美女は、シェヴルーズ公爵夫人で、
王妃アンヌ・ドートリッシュの大のお気に入りだったのです。
かのバッキンガムを王妃を密会させようと画策していたのが、
このシェヴルーズ公爵夫人とアラミスなのです。
実はね、昔シェヴルーズ公爵夫人とアラミスは深い仲だったんですよ。
ふたり揃って、とんでもなく陰謀好き。
それはともかく、アラミスは、昔の恋人が自分の親友の子供を産んだと知って、
びっくりしたでしょう・・・・。たぶん。
それも、女嫌いで通っていた、清廉潔白居士のアトスの子だっていうんですから。
シェヴルーズ公爵夫人っていうのは、実在の人物で、王妃の側近だったというのは、
本当のことです。
ともあれ、とびっきりの美女にしか心を動かされないアトスにそんな衝動を取らせてしまった
シェヴルーズ公爵夫人は当時、宮廷一の美女と噂に高い人だったのです。
公爵夫人は修道院で起こった一件は、全く予想外のことでして、
結局、強引な坊さん(と思っていた)の愛を受け入れてしまったのですが、
相手のことなど一切解りません。
遊び慣れている公爵夫人は「まあ、一夜限りのことだし、そんなこともあるわよ」で済ませていたのですが、
実は妊娠してしまったので、びっくり。どうしましょう。
当時は妊娠したら、人知れず産み落とすしか方法がありません。
産んだあと、赤ん坊をさる修道院へ置いていきます。いわゆる捨て子?
アトスは修道院からの報告を受けて、自分に息子ができたことを喜び、
シェヴルーズ夫人には自分が引き取ったことを伏せるようにと命令を下して
自分で育てることにしたのです!
でも、シェヴルーズ夫人は不義の子とはいえ、自分のおなかを痛めて産んだ息子のことを
密かに気にかけていました。
「わたくしのぼうやはどうなったのかしら・・・・・?」
でも、ラウルがモノの分別が付いた15・6歳ぐらいになったころ、ラウルはシェヴルーズ公爵夫人に
事の一切を打ち明け、ふたりの間にできたラウルを見せるのでした。
聡明で美しい、ふた親のいいところだけを取って生まれてきたような少年をみて
シェヴルーズ公爵夫人は涙を流します。
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とこのような具合なのですが・・・・。
その後、ラウルは7歳年下の幼馴染である、ブロンドの少女に淡い想いを抱きます。
その少女こそ、ルイーズ・ド・ラ・ヴァリエール。
ああ、ルイ14世の寵姫で有名なこの方が出てきたら、その時点で
この恋は破局で終わるのだな・・・・という悲しい予感を読者に与えてしまいますね。
筒井筒のような幼いふたりの愛をはぐくんできたと
信じてきたラウル。こんな顛末になるとはつゆ知らず。
悲劇の道をまっしぐらに彼は走っていきます。
実際、それはそのとおり、なのです。
ルイーズは、もともと地味で目立つことがキライな性格で、しかも優しい女性でした。
そこが、ラウルには好ましく映った美質だったのです。
ですから、ルイーズが華やかな美女がわんさかいる宮廷にあがったときは、「なんだ?この田舎のイモ娘?」
でバカにされていたのですが、「わたしが、わたしが」という自己主張の強い美女にたぶん食傷気味の
ルイ14世は、可憐な野の花のようなルイーズに食指を伸ばしてしまいました。
毎日、ごちそうばっかり食べてると、たまにはお茶漬けサラサラが恋しくなる、あの感覚ですね。
恋は盲目。ルイ14世とルイーズ
ルイーズは、もともとが堅実な性格だったので、ゆくゆくはラウルの妻になるだろうと思っていたし、
そのことに全く疑問に感じたこともなかったのですが、やはりそこに「人を好きになる」というか「恋をする」
というのは、人間の理性の効かないものでありまして、
ラウルに感じていた愛情というのは、「恋」ではないということを本当に人を好きになって初めてわかるのです。
そのことをルイーズは涙を流してラウルに赦しを求めるのですが、
ルイーズ・ド・ラ・ヴァリエール
ラウル自身、本当の恋をしたことがない、といいますか、そういう制御不能の感情を理解しえないのです。
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ああ~、親子して恋愛下手ですね。ラウル、そういうところは母親に似たらよかったのに・・・・。
少なくとも、失恋の痛みは次の恋で癒すという手段もあったというのに。
しかし、父親がアトスだったから、そういう助言をしてくれる人がいなかった。
「お前にも、またステキな女性がそのうちあらわれるさ・・・・」と。
ダルタニャンがそばにいれば、きっとそういってやれたでしょう。
・・・・・・ということで、自暴自棄になっていたラウルは
父親アトスの知り合いで、公爵でもある元帥に誘われて、軍隊に入り、
アフリカ行に加わることにするのです。
アトスはなんとなく、この旅は不吉なものに終わることを予感していました。
きっとこの息子は帰ってこない・・・・。
・・・・なんですかねぇ~。どうして言葉を尽くして息子を説得しないんでしょう?
もともとアトスは最初から、この縁談に乗り気ではありませんでした。
というのも、ルイーズの父親であるラ・ヴァリエール侯爵はすでに亡くなっており、
母親である未亡人は財産ありとはいえど、平民に嫁いでいました。
それに、少しルイーズは足が悪かったんです。
わが息子ならもっと格の高い、もっと美しい女性が似つかわしい、と思っていたのです。
(だけどラウルだってアトスの庶子だったわけだし、しかも母親は公爵夫人とえど、そのころは国家の反逆者として
国外追放の憂き目にあっていたので、それほどすごい、とも言えないと思うんですけれどね・・・・)
しかし、もともと息子のいいなずけを横取りしたカタチになる国王にケンカを売りに行って、
決裂して田舎に隠棲します。
もう、元の鞘にはもどれないふたりなのだから、
こんなやり方はマズいに決まっているのに・・・・。
本当に生きるのがヘタなアトスです。
このように、なにか不思議な諦観に包まれて、この親子はむざむざと終焉に向かって
ことを進めてしまうのです・・・・・・・。
くらべこし振り分け髪も肩すぎぬ ルイーズって可愛らしいお嬢さんですね
by でん子 (2012-05-19 14:57)
>月乃さま niceありがとうございます!
>でん子さま
そうですねぇ。でもね、結局ルイーズは
ルイ14世の子供を3人(だったかな?)産んで
尽くしだけ尽くしたあと、捨てられちゃうんですよね・・・・。
そして、最後は修道院へ・・・。
こんなことならとことん誠実なラウルと一緒になったほうが
何倍マシだったことか・・・。
って、ラウルはデュマのフィクションだから・・・残念なことに。
by sadafusa (2012-05-20 17:57)
>月夜のうずのしゅげさま niceありがとうございました。
(お礼をいうのが遅くなってすみませんでした 汗)
by sadafusa (2012-05-25 09:07)